柏レイソルの育成戦略が示す、日本的な育成システムの構築法

『クラブ改革の3つのステップ』
酒井宏樹、工藤壮人、茨田陽生など、アカデミーからトップへ有能な選手を多く輩出する柏レイソル。クラブが育成に力を注ぐ背景には、どのようなビジョンがあるのだろうか。ユース年代の指導者、アカデミーダイレクターを経て、強化部長に就任した吉田達磨氏の話をもとに、育成をベースとしたクラブ改革の全貌に迫った。

2012年12月29日(Sat)9時47分配信

text by 小澤一郎 photo Kenzaburo Matsuoka
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【サッカー批評issue57】掲載

柏レイソルが築いた育成の基盤

 ハノーファーへの移籍が決まった酒井宏樹が抜けるとはいえ、現在柏レイソルのトップチームに在籍するアカデミー出身選手は大谷秀和、工藤壮人ら7名。特に酒井、工藤ら90年生まれの年代は6名がトップ昇格を果たし、翌年には茨田陽生もプロ入りするなど一気にアカデミー出身選手の保有率を上げた。近年、育成に定評のある柏でアカデミーの礎を築いた吉田達磨氏が彼らをユースまで指導してきた。

 その吉田氏がアカデミーダイレクターと強化本部の強化部長を兼任することからもわかるように、柏はアカデミーにおける育成を重視するのみならず、トップとアカデミーをつなぐ人間を置いている。アカデミーや育成の重要性を謳うたい、コンスタントにユースから選手をトップ昇格させているJクラブは少なくないが、トップに関わる監督、強化部長(GM)がアカデミーの選手やスタッフを完璧に把握しているクラブは少ないのが現状だろう。

「まだ成功したとは思っていなくて、一つの成果が出てきているという捉え方」と述べる吉田氏ではあるが、柏レイソルで推し進められている3段階の育成戦略は他のJクラブにとっても大いに参考となるものであり、日本の育成を劇的に変える可能性すら秘めている。

 柏にとっての育成戦略の第1段階は、「末端組織」として扱われがちだったアカデミーのクラブ内部での認知とステイタスを高めること。そのために吉田氏がまず着手したのが「レイソルらしい」サッカースタイルの確立であり、具体的にはボールとスペースを支配する攻撃的サッカーの追求。そうしたサッカーを吉田氏が掲げた理由は、単に育成年代で勝つ、トップに選手を上げるためだけではなく、「トップチームにつながるサッカー」のイメージを明確に持っていたから。

「毎週末の試合で勝利が義務付けられるトップチームにおいてサッカーそのものの中身を変えていくことは現実的に不可能であり、可能だとしても根幹を支えている部分を劇的に変えるのは難しい。だからこそ、アカデミーで選手が上がっていく過程を経て、徐々にクラブとしてのサッカーが形作られると考えてきたし、日本においては下の年代から上につなげていくのが自然な姿だと思います」と吉田氏は説明する。

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