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日本代表 11年前

ザッケローニの手腕とマネジメント ~気鋭の論客4人が徹底討論~(前編)

『欧州遠征、本田ワントップ、ポゼッション傾倒への弊害…』
ザッケローニが日本代表の監督に就任してから2年が経過した。これまでのチームづくりは順調なのか、また欧州遠征で浮き彫りになった課題とは何か。指導者、ジャーナリストによる討論から日本代表の未来を占いたい。(構成:植田路生)

text by 植田路生 photo by Kenzaburo Matsuoka

【後編はこちらから】 | 【サッカー批評issue59】掲載

パネリスト

三浦俊也
1963年生まれ。指導者。大宮アルディージャやコンサドーレ札幌、ヴィッセル神戸、ヴァンフォーレ甲府などの監督を歴任。

羽中田昌
1964年生まれ。指導者、解説者(スカパー!)。カマタマーレ讃岐や奈良クラブの監督を歴任。

里内猛
1957年生まれ。指導者。03~06年は日本代表の、11年からは五輪代表のフィジカルコーチを務める。2001年までは鹿島アントラーズで同職。

飯尾篤史
1975年生まれ。サッカーライター。週刊サッカーダイジェスト編集部を経て、今年フリーに。Jから代表まで幅広く取材。

1つしかない戦い方ポゼッション固執への危惧

――先の欧州遠征は今後のザックジャパンを考える上でも重要な連戦だったかと思います。さらにチームを進化させていく上での課題はどこにあるでしょうか?

三浦俊也(以下、三浦)「こんなこと言うと身も蓋もないですが、個人の能力でしょうね。恐らくザッケローニがブラジルの監督をしてもブラジルが勝ちますよ。ヨーロッパのトップレベルの中心で戦っている選手が最低でも5人は欲しい。香川(真司)や長友(佑都)ががんばっていますが、その数をもっと増やさなくてはいけない」

羽中田昌(以下、羽中田)「ただ、球際の強さは簡単には上がらない。組織力をどう高めていくか。個人的には選手たちの自主性がもっと出てもいい。フランス戦は観戦者として見れば、南アのときのような戦い方で面白くなかったけど、ブラジル戦は本当に面白かった。選手が楽しそうにやっていましたし、そうなるとアイデアもたくさん生まれますよ。仕掛けたからこそわかることは多々ある」

――里内さん、フィジカルの面ではどうです?

里内猛(以下、里内)「そこは問題ないと思います。2006年W杯のときと比べると格段に強くなりました。あのときは接触プレーですぐ転んでしまう選手が多かったですが、今の選手は少しのコンタクトでは倒されない。戦う選択肢が増えましたね。五輪前の壮行試合のときに清武の靴に走行距離を計るチップを埋めたんです。ピッチに入ってからスパイクを脱ぐまでに『15キロ』という数値が出ていましたよ。ただ、今の代表に足りないのは危険察知能力。ピンチになりそうなときにサッと寄せられるかどうか。長谷部は良くなったとは思うのですが…」

――そこを解決するにはどうしたら良いでしょうか?

羽中田「それも組織力の問題ですよね。ボランチの2人をまだ十分に活かす組織にはなっていない。バルサのシャビはフィジカルは強くありませんが、上手さでボールを奪える。インターセプトですね。それは、シャビより前の選手が相手の動きを限定しているから。さらに細かいことを言えば、ロングフィードの回数が圧倒的に足りない」

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