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FCバルセロナが優秀な選手を輩出し続ける理由

text by 植田路生 photo by Kazuhito Yamada

ペップがもたらした革命

 選手時代の多くをバルセロナで過ごしたグアルディオラ。彼もカンテラで育てられた。2001年にバルセロナを去った後、イタリア、UAE、メキシコでプレーし、2007年にバルセロナへ戻ってきた。バルセロナBの監督としてだ。

 翌年にはトップチームの監督に抜擢されるが、彼が最初に行ったのが、主力選手の入れ替えだ。それまで中核をなしていたロナウジーニョやデコを構想外とし、チームに規律をもたらすと共に、バルセロナのコンセプトを理解する選手たち、いわゆるカンテラ出身選手を積極的に起用した。

 彼はカンテラの重要性について、こう言い切る。
「カンテラの少年が昇格するほど大きな成功はない。それはタイトルを獲得するよりも大きなことだ」

 もっとも、彼は在任中にリーグタイトルを逃したことはなかったし、チャンピオンズリーグも2度制している。
 ペップはバルセロナになにをもたらしたのか。チャビは彼についてこう評している。

「全てが調和しているからこそ、人々は少しずつ理解し始めた。理想的な状況と言えるだろうね。追い風が吹く幸運を手にすることができた。ペップが来て、ペドロやブスケッツが上がってきた。今度は、ティアゴやフォンタスが。状況が悪かったら、こんな流れはないだろう。

 おそらく、他クラブは勝利を義務付けられていて、新たな試みはできないはずだ。タイトルを失ったら、周囲の人々は『新戦力を獲得すべきだ』と言うだろうし、カンテラは再び軽視される。君がカンテラからトップチームに上がったばかりの少年で、サイクルの変化に見舞われた時のことを想像してみてよ。トップチームが良くない状況で、カンテラから経験のない選手が上がってこられるだろ
うか?

 外国から新しい監督がやってきたら、当然ながら選手たちを知らないし、どの少年が誰なのかもわからない。そういう場合、できることは何もない。タイミングというのはとても大切なんだ。バルサの鍵となるのは選手を昇格させるエレベーターであり、エレベーター係はとても重要なんだ」

引用:『FCバルセロナの人材獲得術と育成メソッドのすべて』マルティ・ペラルナウ著、浜田満・監修/翻訳

 今日のバルセロナのそのすべてをグアルディオラがつくったなどと言うつもりはない。クライフが築き上げた哲学があり、積み重ねてきた確固たる歴史がある。ただ、それらをアップデートし、磨き上げたのは紛れもなくペップこと、グアルディオラだ。

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