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FCバルセロナが優秀な選手を輩出し続ける理由

text by 植田路生 photo by Kazuhito Yamada

トップ昇格できるカンテラ選手はわずか10%

 カンテラこそ最大の補強――これをまさに実践し続けているバルセロナ。だが、ピッチ内の華やかなフットボールとは裏腹に、日向に辿り着けなかった者たちの闇は深く、大きな影を作っている。

 どこのクラブでもそうだが、バルセロナでも獲得した選手すべてがトップチームに昇格できるわけではない。バルサのコンセプトに合うような選手を探すため、世界中から選手を探しているにもかかわらず、だ。前述したペラルナウ氏の著書から、衝撃的なデータを引用しよう。

 バルセロナのカンテラに入り、そこからトップチームデビューができる選手は全体の約10%しかいない。これはデビューしただけの数字で、“定着”となるとさらに数字は下がる。現在カンテラには250人ほどの選手が在籍しているが、そのうちの25人しかカンプ・ノウでプレーできないことになる。

 残りの90%はどうなっているのか。10%はリーガエスパニューラや他のヨーロッパのリーグの1部でプレーしている。だが、35%は2部リーグに所属し、さらに残りの45%はもっと下のカテゴリーにいるか、サッカーを辞めているという。

 各年代で生き残るためには厳しい競争にさらされる。今日一緒にプレーしていた仲間が明日にはいなくなり、別の選手が入ってくることもザラにある。今、カンプ・ノウでプレーしているメッシやチャビ、イニエスタらはそこでの競争にすべて勝ってきたということになる。

 競争は過酷だ。だが、才能は枯渇していない。ブスケッツやペドロは外国人選手からポジションを奪い、セスク・ファブレガスも戻ってきた。昨年11月にはピッチ内の全員がカンテラ出身という偉業も達成している。

 バルセロナが今の哲学を曲げない限り、今後もカンテラの選手たちは賞賛を浴び続けるだろう。メッシやイニエスタが衰えたとしても、その先にはテージョやクエンカら輝ける才能が控えている。メッシはバロンドールを史上初の4年連続で受賞したが、それ以上の功績を残す選手が出てきたとしても何ら不思議ではない。

【了】

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