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Jリーグ 11年前

検証・移籍ルール変更後のJリーグ ~Jクラブは直面する現実にどう対処すべきか?~(後編)

text by 小澤一郎 photo by Ryota Harada

魅力あるクラブを作るしかない

 だからこそ、田邊氏は「魅力あるクラブを作る。これしかない」と力強く語る。

「魅力あるクラブ作りをしてダメなら仕方がないのです。トヨタがどれだけ頑張ってレクサスを作ってもベンツを買う人間はベンツを買う。それと一緒。魅力あるクラブとはどんなクラブなのかをみんなで考えるべき。いろんな魅力があると思うけれど、以前ベンゲルがアーセナルにこれだけの選手が集まる理由は、施設、ハード面だと語っていました。選手というのは多くの時間を練習場で過ごすことになるわけで、快適に過ごせる環境を提供することが選手にとっての魅力だと。確かに一理あるなと思いました」

 FIFAルールの採用以後、続出する主力選手の0円移籍でJクラブが頭を抱えているのは確かで、佐久間GMが提案するように国策としてのローカルルールの再設定も対策候補の一つではある。しかし、FIFAルールの採用に関係なく、今の時代、サッカーというグローバルスポーツの中で、JリーグやJクラブが世界のクラブを相手にビジネス上の戦いや交渉を行うことはもはや避けることができない。

 ルールの良し悪しやこのルールが選手とクラブのどちらに有利か不利かを論じることではなく、まずは魅力あるJリーグ、魅力あるクラブとはどういうことか、存在意義を含めて考えていくこと。魅力あるクラブ作りのために移籍金が必要なのであれば、選手を育て、移籍金付きで売るためのスキームを考えるべきで、参考事例はサッカー先進国の欧州にたくさん転がっている。

 結局のところ、FIFAルールの採用によって今求められていることは、Jリーグ、Jクラブ、選手という全体の利益、サッカー産業としての発展を考えた中での共存共栄のスキームやアイディアなのだ。逆にクラブだけ、選手だけという単体の利益だけを追求する時には必ず歪みの出るルールなのである。この本質を我々も含めて全員が理解しない限り、FIFAルールを用いてJリーグが、日本サッカー界が発展することはないだろう。

【了】

初出:サッカー批評issue50

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