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Jリーグ 11年前

検証・移籍ルール変更後のJリーグ ~Jクラブは直面する現実にどう対処すべきか?~(後編)

text by 小澤一郎 photo by Ryota Harada

求められる世界統一の基準や認識の受け入れ

「彼らだって(移籍先クラブ側からの通知は)出ていない。『通知は出るんですか?』と聞かれた時には『出ませんが、欲しかったら聞きます。必要ですか?』と言うと別に必要じゃない。それよりも国内リーグが終わるまでの選手側の意思表示とクラブの対応の方が重要だと思います。今回の岡崎問題について、清水に実害が発生しているとは全く思えなくて、『日本人選手を獲得するのは面倒だ』、もっと言うと『清水に行くと面倒なことになる』というリスクを負ってまで主張するようなことなのか疑問です」。

 鹿島の鈴木氏も「FIFAルールというのは、シーズンが終われば、次のシーズンの契約がなければフリーになるという趣旨です。1月31日がどうのこうのというようなことで揉めるような趣旨で決まったルールではありません」と語っており、甲府の佐久間氏も「1日、2日を焦点にするのはどうかなと思います。最後はやはり挨拶がないとか個人的感情論で、重箱の隅をつつくようなものになってしまいますから」という認識だった。

 今回の清水の対応は裏を返せば、主力選手に複数年契約を提示して拒否された時、Jクラブが契約満了を防ぐために強権的な態度を取れないことを改めて浮き彫りにしている。岡崎問題の本質というのは実はここにある。Jクラブのサポーターが「クラブありき」で時にクラブの利益に反する行動を取ろうとした選手に対してドライな態度や、厳しい目を持てるかどうか。

 契約延長を断わられたタイミングで清水が岡崎を干すようなことがあった場合、「かわいそう」という感情論ではなく、「クラブのためには仕方のないこと」と割り切れるのかどうか。FIFAルールへの移行というのは、クラブと選手のみならず、サポーターにまで世界統一の基準や認識の受け入れを求めているのだ。

 ただし、そこまでの事態に陥る前にできることはある。例えば、田邊氏は自社セミナーでこれからのクラブに求められることの一つとして、「エージェントとの友好的かつ戦略的な関係」を挙げている。エージェントを敵視することなく、パートナーとして一緒に選手を売っていくような共存共栄の関係、そのためのスキーム構築。

 佐久間GMも岡崎問題に絡めて、「出て行くとしてもいくらか移籍金が欲しいというのであれば、そこは強化部がエージェントと真摯に話し合って、『満額とは言わない。向こうが払える妥当な額でよいから、少しはクラブにおいていってくれ』という話をして、説得する必要があったのかもしれません。もしかしたらおやりになったのかもしれませんし、それで選手側が『何を言っているんですか』と言われてしまえばそれまでなんですけど」と説明する。

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