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日本代表 11年前

停滞した攻撃にリズムをもたらした中村憲剛。ヨルダン戦に向けたオプションになるか?

text by 河治良幸 photo by Kenzaburo Matsuoka

問題があった乾と前田の動きの質

 その状況を改善するにはもちろん、攻撃のリズムを良くして日本が主導権を取ることが求められる。そのためには組織的な守備が機能することも重要事項だが、攻撃では2列目の選手、特にトップ下の香川が前を向いてボールを持つことが必要だ。しかし、この試合では両ウィングの乾と岡崎が“ワイドに張る”という基本の約束事に縛られ、香川とテンポ良くパスを交換できる距離感を作れなかった。

 乾は全体のリズムが悪い中でもボールを持てばサイドで積極的に仕掛け、相手DFラインの裏に飛び出してラストパスを受ける意識も高かった。さらに守備面でも対面する右サイドバックのレジャーウッドをしっかりマークして、ウィングのサポートをさせなかったことはザッケローニ監督の評価を上げたと考えられる。

 ただし、中央寄りで相手の守備を引き付けて香川のマークをはがすといった気の利いたプレーは不十分で、ある意味個人として危険なだけになってしまった。右ウィングの岡崎はそもそも中盤で起点になるタイプではないため、香川や遠藤のところでタメができないと消えてしまう傾向は強い。そうした中でも得意の裏に走る動きで相手のDFラインを下げ、香川や遠藤のプレーエリアを広げる工夫はもっとほしかった。

 1トップの前田が体格で上回る2人のセンターバックに“潰された”ことも、日本の攻撃リズムを作る意味で痛かった。「攻撃に深みをもたらすこと」を1トップの重要な仕事と認識する前田だけに、前線でボールをおさめてキープすることが難しいと分かった時点で、一度オフサイドラインに出てから引くなど、もっとオフ・ザ・ボールの動きで揺さぶっても良かったかもしれない。

 そうしたボールを前線から引き出すことで、自分は十分な状態でボールを触れなくても、2列目に前を向かせ、そこからゴール前でフィニッシュに絡む流れに持ち込めたのではないか。

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