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盤石の勝利を飾ったバイエルン。“ユベントス封じ”の戦術を徹底分析

text by 河治良幸 photo by Kazuhito Yamada

ユベントスを追い詰めたピルロへのマンマーク

2.ショートカウンターをさせない

 ここまでグループリーグと合わせユベントスがあげてきた得点の大半はカウンター、特に高い位置でボールを奪ってからのショートカウンターによってもたらされた。そのために組織的なプレッシングをかけて主に中盤でボールを奪おうとするのだが、バイエルンはワイドなパス、縦のドリブル、ロングボールの3つを有効に使うことで、そうしたリスクを回避した。

 もっともリードしてからしばらくは、アラバの中途半端なパスがリヒトシュタイナーにカットされるなど、何度か危ない場面を招いたのだ。しかし、そこを守備陣の粘り強い対応でしのぎ、時間を追うに連れて試合運びがチームとして明確になり、安定していった。

 ワイドなパスは主にラームとシュバインシュタイガー。縦のドリブルはロッベン、リベリー、アラバ。そしてロングボールは2人のセンターバックとノイアーが担い、グスタボがあらゆる局面でバランサーとして機能する。

 バルセロナの様に華麗なショートパスをつなげて相手のプレスを翻弄するわけではないが、確実にプレスの罠を外し、機能性を奪っていく戦い方は老獪で、イタリア王者を相手にも効果を発揮していた。

3.司令塔ピルロのマンマーク

 ユベントスをさらに追い詰めたのがピルロのマンマークだ。中盤の底から長短のパスを振り分けて組み立てる彼を序盤はクロースが厳しくマークし、そのクロースがアクシデントで退いた後は、ミュラーが中央のトップ下に移ってその役目を担当した。

 クロースもミュラーも攻撃にはしっかり絡むため、攻守の切り替わりにおいては一時的にマークを受け渡していたが、司令塔が自由を奪われたことで、ユベントスは中盤での有効なつなぎと決定的なパスの両方を限定された。

 攻撃の軸であるピルロがマンマークに付かれることはこれまでもあったが、バイエルンは全体的に厳しいプレッシャーをかける中にマンマークを入れることで、ピルロを経由できないユベントスの行動を著しく制限したのだ。

 結局、明確な手立てのないまま敗れたユベントス。第2レグはホームとなるが、同じ戦い方で2点差を逆転することは難しい。主力の1人であるMFビダルもこの日の警告で出場停止が決まっている中で、コンテ監督がどういった手段に出るか注目したい。

【了】

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