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技術はまだバルサが上? 強かったが戦術的新機軸はなかったCL決勝でのドイツ対決

完成度の高いチーム同士の対決となった今季のチャンピオンズリーグ決勝。“ドイツ時代の到来”とまで言われたバイエルンとドルトムントの勝ち上がりだったが、彼らはいかにして戦術を磨き上げたのか?

text by 西部謙司 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

ハードワークで凌駕したドイツ勢

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CLを制したバイエルン【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 CL決勝のドイツ対決はオープンで、どちらも持ち味を出した好試合だった。しかし、戦術的に新機軸と呼べるようなものはなかったと思う。

 バイエルン・ミュンヘンとボルシア・ドルトムントは今季から急激に何かが変わったわけではなく、戦術的にはこれまであったものに積み上げて完成度を増したにすぎない。その点では、ここ数年をリードしてきたバルセロナ登場時のような驚きはなかった。

 バルセロナとスペイン代表が戦術の潮流を作る以前のキーワードは「ハードワーク」だった。バイエルンとドルトムントのサッカーはハードワークを基調にそれぞれの特徴を加えて完成度を高めたものだ。

 バイエルンはリベリー、ロッベンの精力的な守備に見られるように個人能力の高い選手がハードワークを極めることで攻守に隙のないチームに進化。ドルトムントはバイエルンほどの個人能力はないぶん、縦への速い展開と攻守の切り替えのスピードに重点を置いた戦闘力の高いスタイルに傾斜した。

 彼らが準決勝で対戦したバルセロナ、レアル・マドリーはポゼッションとカウンターという違いはあっても、ともにテクニックのチームだ。ドイツ勢はスペイン勢のテクニックに迫り、ハードワークで凌駕することで結果を出した。

 どちらも技術だけ、体力だけというわけではないが、体力に特徴のあるドイツ勢が技術を高め、さらに持ち味の体力を生かして完成度を上げたために実力が均衡した。

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