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「落ち着け」では解消しない! 日本人選手に決定力がない本当の理由

text by 中村僚 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

日本人はゴールが決まるコースを知らない?

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クリスティアーノ・ロナウド【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 なぜGKは[3]のコースへの対処ができないのか? それは人体の構造や反射といったところに原因があるように思う。生物学的な分野になってしまうため、今回はその原因への言及は避ける。だが確かに[3]のコースは存在する。私は「決定力」の鍵がこの点にあると確信した。

 そこで彼らのシュートと今季のJ1、J2のゴールを100本ずつ確認し、主観ではあるが、上記の[1][2][3]に分類して統計を取った。すると非常に興味深い結果が出た。

 まず[1]だが、これは3者とも概ね変わらない。GKの対応が不可能なコースへのシュートはもっとも確実にゴールが決まるものであり、メッシが68%、ロナウドとJリーグが70%と、得点となるシュートは高確率でこのパターンが当てはまる。

 問題は[2]と[3]だ。メッシ、ロナウドは共に[2]が12%にとどまり、[3]がそれぞれ20%、19%に及んでいる。それに対しJリーグは[2]が22%と高く、[3]は8%止まりだ。

 この結果から、私はある仮説を立てた。「日本人は、GKの守備範囲内にも関わらずゴールが決まるコースがあることを知らない」、あるいは「コースの存在を知りながらも、選択肢に含めていない」ということである。

 この仮説を実証するため、私はある実験を行った。地元の少年チームに協力を依頼し、GKとの1対1でシュート練習を行う。シチュエーションのイメージは、DFラインを完全に抜け出してスルーパスを受け、GKとの1対1を迎えたという場面だ。

 ただし、より実戦に近い状況を再現するために、筆者がDFとして背後から全力でプレスバックをする(第一線を退いて久しい体で30m弱の全力スプリントを繰り返した末路は言うまでもない)。これをシューターとGK3人ずつに、それぞれ20本ずつ行ってもらう。彼らはいずれも狙ったところに蹴る技術、GKとしてある程度の水準を満たした技術を備えている選手たちだ。

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