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日本代表 11年前

中途半端な“テスト”に終わったイラク戦。香川トップ下はなぜ機能しなかったのか?【どこよりも早い日本代表採点】

シリーズ:どこよりも早い採点 text by 植田路生

なぜ攻撃は機能しなかったのか?

 ザッケローニ監督の意図である「速攻への意識付け」はある程度成功したように思える。前後半を通じて、いくつか意図的に縦に早い仕掛けを見せる場面があった。だが、機能していたわけではない。

 その理由は3つ。まず、イラクのテンションが高かった。勝たなければならないという状況からか、リトリートが早い。前半から飛ばしていたのは明白で、ボールロストするとすぐに戻り、日本の速攻を防いでいた。

 2つ目が暑さ。香川がボールを受けたときに両サイドが素早く香川を追い越す動きを仕掛ける必要があったが、暑さもあり、走り切る場面は少なかった。

 3つ目が1トップのハーフナー。ボールが収まらず、縦に早いボールを入れてもそこから展開できたのはごくわずか。素早い攻撃を仕掛ける場合、どうしても前線でのタメは必要になる。ここでロストし、再び相手ボールとなったため反撃を受けてしまい、思うように試合を運べなかった。

 厳しい環境の中、チャレンジへの意図は感じられた。しかし、十分な手応えを得たとは言えないだろう。主力をある程度入れることでチームの骨格を残しつつのテストだったが、どっちつかずだった点も否めない。攻撃スピードが上がらないならばドリブラーの乾貴士を投入してもよかったはずだ。

 また、選手たちも勝ち点3が必ずしも必要ではない試合で、どこか慎重になり過ぎていた。高い目標を掲げているならば、自分たちが試合を通じて成長するために、失敗を恐れずにプレーして欲しかった。最近の代表に求められているのは得点。コンフェデで点をとって勝つイメージをこの試合でつけられたかは疑問だ。

 W杯予選を1位通過。それ自体は賞賛されるべきことだ。だが、アジアはあくまで通過点ではなかったか。W杯まであと1年。ザックジャパンはいくつもの課題を抱えたまま、ブラジルに旅立つことになる。

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