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【ロングインタビュー】カルロ・アンチェロッティ、勝者の戦術論(前編)

text by クリスティアーノ・ルイウ photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

バルサとの大きな違い

――ライカールトと同じく“アヤックス派”から生まれた超一流としてズラタン・イブラヒモビッチがいるわけですが、しかし彼は、いわゆる“バルサイズム”に馴染むことはできなかった。

「確かに。だがそうした例外の派生もまたこの競技の持つ面白さ、あるいは醍醐味というべきなのだろう。イブラはその成長の過程で固有のスタイルを確立し、それは今に見る結果が如実に示しているように、より我々イタリアのサッカーに適したプレーヤーとなっていった」

――バルサとイタリア、なぜこれほどまで大きな違いがあるのでしょうか。

「というより、あのバルサの模倣が実際には不可能と考えるべきである以上、違うのは何も我々イタリアだけでないということになる。欧州全土を見渡しても、バルサと酷似し、しかもその技術レベルで肩を並べるチームなど存在しない。それが紛れもない現実だ。

 その意味で、他ならぬバルサ派の監督、ルイス・エンリケに率いられた今季のローマは注目に値する。私の古巣でもあるし、成功を切に祈りながら、非常に興味深く見ているところだよ。もっとも、シーズン半ばの今この時点においては、まだ守備に多くの問題を抱えていると言うべきだが、それでもやはり、こと攻撃に関しては実に面白い形を多く見せてくれている。クラブ首脳が今のように監督を信頼し、必要な時間を与えることができれば、きっとルイス・エンリケは新たなスタイルを確立してみせるだろう。まさにバルサとイタリアサッカーの融合した形をね。もしもそれに成功すれば、それこそ戦術の潮流という意味で、とても新鮮な変化をこの欧州にもたらしてくれるのかもしれない。

 そして、“バルサと他との違い”という観点でもうひとつ言えるのは、昨年末に日本で行われたクラブW杯、『バルセロナ対サントス』が最も象徴的な例として挙げられるということだ。両者の実力差は余りにも歴然としていた。少なくともカテゴリー2つ分の開きがあった。むしろ、あの横浜にみた2チームは“異なる競技”を演じていたとも言えるのではないか」

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