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サッカー業界の暗部の実態。世界一の放映権料で潤うプレミアリーグで働く無給の人々

text by 永田到 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

「憧れ産業」が抱える構造的な問題

 コスト削減策としてのインターンシップ、という実態が浮かび上がるのは、サッカー業界に限った話ではない。ゲーム業界では、テレビゲームのバグチェック業務をインターン生に行わせる、といった事例が存在する。

 業務内容は極めて単純だ。実際にゲームをプレーし、コントローラーを操作する。指定の状況下でボタン操作し、バグの発生有無確認を淡々と繰り返すというもの。単純作業であるがゆえに、スキル向上や組織理解といった学生にとってのメリットも多くは望めない。それでも、憧れの業界への就職を夢見る学生にとっては、受け入れざるを得ない条件だ。

 ここに、いわゆる「憧れ産業」における構造的な就労問題が見て取れる。スポーツやゲームを含むエンターテインメント関連産業は、その仕事に就くこと自体が憧れの対象となりやすい。そのため、低待遇であっても就職希望者が集まりやすい傾向にある。

 ゆえに、就職困難な業界で働けるのなら、と就職希望者は待遇を度外視して働く事を受け入れる。このようにして、本来持っている労働価値を就職希望者自身が落としてしまうという構図だ。

 プレミアリーグは、放映権料をベースに収入を年々増加させており、2013-14シーズンも昨シーズン比25%の収入増加が予想されている。それでも末端にいるスタッフの現状を見る限り、こうした恩恵がクラブ全体に行き渡っているとは言い難い現状がある。

 売上高をどれだけ拡大していっても、対価としての適正な報酬を行き渡らせる組織風土がなければ、スタッフは疲弊するばかりだ。「憧憬の対象」という位置づけに終わってしまっては、人材は他の業界や組織に流れてしまう。

 労働環境の改善を目指し、「適正な待遇が見込める就労先」へ向けた取り組みをしないことには、どんなに潤沢な予算になろうとも、クラブの社会的価値の向上は望めない。

【了】

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