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セリエA 11年前

なぜイタリアで3バックが流行したのか? 超進化型システムのメカニズムに迫る(前編)

text by 神尾光臣 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

ベンチマークを作ったナポリのマッツァーリ

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ナポリの基本フォーメーションは3-4-1-2。インシーニェが入る場合は、彼とハムシクが2シャドーとなる3-4-2-1となる。守備時にはウイングバック、もしくはCB がスライドしサイドのスペースを埋める。さらにスライドして空いたスペースにはFWが入るため、全エリアでプレスをかけることができる。攻撃時にはCBがワイドに広がり、ビルドアップに参加する。

 3バックは、今シーズンもセリエAで主流となっている。採用するチームは10にわたり、上位8チーム中5チームを占める(第22節終了時)。3バックで戦い、成功しているクラブにはどんな戦術的メカニズムが内包されているのだろうか。

 まずは、システムのベンチマークを作ったと自他ともに認める、マッツァーリ監督のナポリを例に見てみたい。就任から4年、現在のチームはマッツァーリの理論をほぼ完璧に遂行する。3バックはサイドの幅を取り易く、中盤で数的優位が保てるという捨てがたいメリットがある。

 だがその一方で、ウイングバック裏にはスペースを残し、かといって後ろを気にすれば実質5バック気味になり、今度は中盤でプレスに指し負ける。そこを精密なカバーリングで補い、3バックでありながらゾーンに穴がなく、激しいプレスを敢行出来る組織を作り上げる。これがリボルノ、レッジーナの時代から変わらない彼の戦術の根幹だ。

 守勢時では、サイドのスペースは片方のウイングバックが下がるか、また3バックがスライドして埋める。その一方で中盤にも人数が保たれるよう、ウイングバックが下がったスペースにはハムシクがスライド。時にはそこにカバーニまでもが加わり、緊密な組織による激しいプレスが全エリアで可能となるのだ。

 そしてボールを刈り取った後は、手数が少なくハイテンポなショートカウンターを繰り出す。また攻撃陣はそれぞれに走力とスピードがあるので、攻撃的な相手に対しては敢えてプレスラインを低めに設定し、攻めさせてカウンターを狙うのも得意なパターンである。

 もちろんマッジョ、スニガらのウイングバックは攻撃時に非常に重要な役割を果たす。卓越した走力を活かし、マッジョに至っては積極的に前線に飛び出してゴールすら狙う。彼らのサイドアタックで敵陣は横に拡げられ、カバーニやハムシクにパンデフ、そしてインシーニェらが存分に暴れ回れるプレーゾーンが確保されるのだ。

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