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中国サッカーに未来はあるか?(その4)

中国サッカーの未来は明るいのか? 2012年5月、広州恒大の監督にマルチェロ・リッピが就任するなど、足早に変化する中国超級(スーパーリーグ)。クラブの経営事情に迫るとともに、育成環境の現状をレポートする。

text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya

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知られざるサッカーシティ、広州

 広州の空港に到着したのは4月14日の23時のことである。現地が大雨のため、飛行機の発着時間が2時間も遅れてしまった。飛行機のドアが開いた瞬間、さながら東南アジアのようなねっとり湿気を含んだ空気に包まれる。ちなみに、広西チワン族自治区を挟んで向こう側は、もうベトナムである。

 広州と言えば、まず思い浮かぶのが「食」。その一方で、大連と並ぶ「サッカーどころ」としても有名である。事実、中国超級の1位と2位を、ここを本拠とする2つのチーム、広州富力と広州恒大が独占している。

 恒大は昨シーズン、2部から昇格していきなり優勝。富力もまた、今季昇格1年目ながら、ここまで5勝0分け1敗の勝ち点15でトップを走り続けている。地元紙は、この2チームの躍進について「頭羊頭馬」という見出しを掲げていた。「羊」は広州、「馬」は昇格チームを意味する。つまり、広州の昇格2チームが、リーグのトップを走る様を、それぞれ動物で表現している。いかにも中国らしい表現ではないか。

 地元の記者の言葉を借りれば、広州はアマチュア・フットボーラーの数が全国的にも多いことで知られているという。なるほど確かに、ここには北京や上海以上に「サッカーの熱」が横溢している。最初にそれを感じたのは、翌15日に越秀山体育場で行われた富力と大連実徳とのゲームであった。

 スタンドは7割近くが埋まり、富力サポーターだけでなく、ごく普通のおじさんやおばさんがオーバーアクションで応援している姿が、何とも微笑ましい。試合は1-0で富力が勝利。地元の人々は満足げな表情でスタジアムを後にする。ある意味、それはとても幸せな光景であった。しかし一方で、このスタンドの光景にある種の不自然さも覚えてしまった。というのも、富力のサポーターの数が不自然に多かったからだ。

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