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連載コラム 11年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。“遊牧民”たちを惹きつけたチャンピオンズリーグの成功

シリーズ:W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール text by 田崎健太 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

CLの成功でブラジル人は欧州へ

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ブラジル人選手の移籍先は欧州が最優先に【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 97-98年シーズンからは、各国リーグの優勝クラブに加えて、リーグ2位のクラブにも出場権を与えることにした。2位のクラブは予備予選に出場することで優勝クラブと差別化している。

 試合数が増えれば、テレビの放映時間も延びる。そして、UEFAが手にする放映料も増える。さらに、当時有料放送局が台頭していた。CLは桁違いの放映権を生み出すコンテンツとなった。そしてその金はクラブに還元された――。一部の強豪クラブにケタ外れの金が流れ込むようになったのだ。

 最も能力のある遊牧民たちは金の動きに敏感である――ブラジル代表の主力は欧州のビッグクラブを目的地として、日本にはそれよりも少し落ちる選手が集まるようになった。その証左に、2002年の日韓W杯で優勝したブラジル代表で、日本でプレーした経験があったのはエジウソンただ1人だった。そしてこの柏レイソルで快足を見せつけたフォワードは控えの選手に過ぎなかった。

 サッカーは経済情勢にも影響される。

 天然資源で潤う旧ロシア諸国のクラブが、欧州に迫る、あるいはそれ以上の金額を提示するようになった。ルーブルなどの通貨高も、為替換算するとこれらの国の年俸を跳ね上げる結果となった。

 Jリーグ草創期は、<1.日本、2.欧州>だった、ブラジルの遊牧民たちの目的地は、CL後には、<1.欧州、2.日本、3.メキシコ>、<1.欧州、2.旧ロシア諸国、3.メキシコ、4.日本>となった。

 そして2008年ごろから、その遊牧民が、母国ブラジルに戻るようになった。

 その嚆矢となったのが、2002年W杯で得点王となった“怪物”ロナウドである。このロナウドの契約内容は、かなり驚くものであった――。

【次週に続く】

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