フットボールチャンネル

ルーニー獲得に執念を燃やすが――。モウリーニョはトーレスを再生させることが出来るか?

text by 山中忍 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

トーレスに求められる意義あるゴール

 トーレスのゴールと言えば、ことチェルシー・ファンにとっては、自軍との対戦で、スティーブン・ジェラードがハーフウェイラインから送ったパスを仕留めた、プレミア初ゴールの印象が強い。

 今季のチェルシーには、マルコ・ファン・ヒンケルという、パス能力の高い新ボランチが加わった。上位対決やCLでのビッグゲームでは、ベテランのフランク・ランパードが、中盤から得意のスルーパスを狙う姿も見られるだろう。

 チームとして、中盤以前でのボール奪取からカウンターを狙う姿勢が徹底される試合では、トーレスへのホットライン形成可能だ。2列目要員にフィジカルが乏しいことから、ルーニーがいれば、ここ一番では1トップの背後で起用されるかもしれない。リバプール時代のトーレスは、ジェラードのトップ下起用でも恩恵を受けた。

 重要な試合でポイントにつながる仕事ができれば、昨季には、我慢しきれずに批判を始めたファンも、再び完全支援の構えを見せるに違いない。トーレスの問題は、得点数の少なさと共に、「意義あるゴール」の少なさにある。

 例えば、移籍1シーズン目の唯一のゴールは、ウェストハム戦(3-0)でのチーム2点目。翌シーズンのハットトリックは、大勝したQPR戦(6-1)でのこと。合計は23得点の昨季も、トップ4争いで苦戦したリーグでは8得点のみだった。

 モウリーニョの下で、価値あるゴールを決められるようになれば、ファンの声援と共に当人の自信も増す。自信が増せば、衰えが見られるスピードには依存しないミドルやヘディングの精度も、リバプール時代のレベルに戻ると期待できる。

 今季は、スペイン代表チームメイトのフアン・マタが、定位置となりそうな右サイドから、頻繁にクロスを届けてもくれるだろう。再生プランはないと言った指揮官も、「結果として、トーレスは力を発揮できるようになる」と語っている。モウリーニョのトーレス「再活用」に注目だ。

【了】

関連リンク

欧州サッカー批評 SPECIAL ISSUE08

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top