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デコが語るビッグイヤー獲得の舞台裏(後編)

text by 沢田啓明 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Hiroaki Sawada

残り14分、同点の流れになっても90分で決着をつける覚悟があった

──この時点で、残り時間は14分。最悪の場合は延長に入ってもいい、という気持ちはあったのですか?

「いや、それはない。同点になって流れがバルセロナにきたから、90分で決着をつけたいと思っていた」

──その5分後、右サイドバックのオレゲールに代わって後半21分に投入されていたジュリアーノ・ベレッチが大仕事をやってのけます。右サイドでラーションにボールを預けると猛然とダッシュし、ラーションからのリターンを受けると、ニアサイドに逆転弾を叩き込みました。

「監督からも指示があり、僕たちがずっと狙っていた形での得点だった。欧州最強のアーセナル守備陣に対して普通のことをやっていても、絶対に点なんか取れない。ピッチに入ったばかりでフレッシュだったべレッチがものすごいスピードで後ろから飛び出してきたから、相手の対応がわずかに遅れたんだ。シュートもすばらしかった」

──最後の14分間で、どうしてこのような劇的な逆転が可能となったのでしょうか?

「簡単に言えば、自信に裏打ちされた落ち着きだろうね。数的優位の状況にありながら自分たちのミスから先制されてしまったことで、普通のチームなら相当のショックを受けていたはずだ。でも、誰も平常心を失わず、攻守のバランスを保ちながら、粘り強く攻め続けた。それがボディブローのように効いて、終盤に実ったのだと思う。追いついた時点で一息入れず、さらに攻撃の手を強めたのも正解だった」

──試合終了の瞬間、どんな気持ちでしたか?

「爆発的な喜び、この上ない満足感、そして自分の責任を果たせたことによる安堵感。3シーズンで2度も欧州王者になれて、自分は本当に幸運な男だと思った。プロとして駆け出しの頃からのいろんな苦労や出来事が、まるで短編映画のように頭の中を駆けめぐった」

──クラブ関係者、地元メディア、サポーターの反応は?

「誰もが狂ったように喜んでいた。バルセロナに凱旋してからの優勝パレードでは、数十万人のサポーターと共に喜びを分かち合うことができた。自分たちが大変な偉業を成し遂げたんだ、という実感がわいた」

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