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CLユベントス戦でコペンハーゲンが見せた賞賛すべき奮闘。サッカーの美しさ、本質とは何か?

text by 宮崎隆司

まさにカテナッチョだったスタイル

 そのコペンハーゲンの奮闘をみながら思い出していたのが、W杯前回大会(2010年南ア大会)のスペインVSスイスである。大方どころか世界中の予想をモノの見事に覆してはスイスが1-0で欧州王者のスペインを破ってみせた試合である。

 圧倒的な実力差ゆえにマトモにボールに触れることさえままならないような状況が90分も続く中で、しかし強かに守り抜き、耐え忍んでは唯一とさえ言えるチャンスをモノにして点を獲り、ならば後は再び守備に徹して守り通してみせたというのがあの試合だった。
 
 そして思うのは、後に世界王者となるスペインを倒したスイスにせよ、欧州にその名を轟かせて久しいユベントスと引き分けてみせた昨日のコペンハーゲンにせよ、敢えてそのサッカーのスタイルを一言で言ってしまえば、まさに“カテナッチョ”そのものである。

 だが、果たして一体だれが彼らを「守備的に過ぎる」とか、そのサッカーは「美しくない」とか、「あんなものはアンチフットボールだ」と批判しただろうか。仮にそう言って厳しく評価する向きが皆無ではなかったとしても、ではそのような見方が本当に正しいと言えるのであろうか。私見ながら、答えは「否」である。
 
 実力で勝るからこそ攻めに攻めるチームが一方にいる。ならばもう一方には守りに守って何とか勝ち点1を、あわよくば勝ち点3を虎視眈々と狙おうとするチームがある。これもまた紛れもなき一サッカーの在り方だからだ。言わずもがな、誰もがあのバルサやレアルのように華麗にプレーできるわけではない。

 蛇足ながら、当の私自身が属する草サッカーのチームが超絶なまでに弱小なので、この耐えて守り抜く意味もその辛さも虚しさも(極めて次元は低いのだが)知っている。しかし同時に、この守り切っては例えばカウンター一発で強敵を負かした際の鳥肌の立つ快感もまた骨身に沁みて知っているのである。だからこそ、(個人的にはユベントス贔屓でありながらも…)昨日の一戦では心からの喝采をコペンハーゲンに送るのだ。

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