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活躍の影には新GKコーチの存在が。放出候補だった川島永嗣はいかにして“難攻不落”となり得たのか?

text by 小川由紀子 photo by Asuka Kudo / Football Channel

新GKコーチの第一印象も良いものではなく…

 ところが、新シーズンが明けて一躍ヒーローとなったのは川島だった。

 リーグ随一の防御率でチームの連戦連勝に貢献。その華麗な躍進は、まるで、何者かが魔法の杖を振るったかのようだが、実際、「魔術師」と呼べなくはない人物の存在が、その影にはあった。

 今夏、テクニカルスタッフの一新に併せて着任した、GKコーチのヨス・ベックスだ。

 ベックスは、ベルギー国内では、若手育成の一任者として知られる名GKコーチで、現ベルギー代表のナンバー1、2両GK、チボー・クルトワ(アトレチコ・マドリー)とシモン・ミニョレ(リバプール)も、彼が育てた選手たちだ。

 試合のビデオを徹底的に検証して、各選手が得意とする点、苦手とする点の両面を的確に把握して練習プログラムを作成する丁寧な指導法に加え、「GKは、1日24時間、週7日間、常にGKであるべし」をモットーに、日々の食生活から、ピッチ外の行動についてもアドバイスを与えるのが、ベックスのやり方だ。

 その彼が、6月に着任した際、最初にクラブ上層部に依頼されたのは、今季の正GK候補を推薦することだった。

 昨季の川島の試合のビデオや、6月のコンフェデレーションズ杯での戦いぶりを見て、名門スタンダールのゴールを任せることに「今ひとつ確証がもてなかった」と感じたベックスは、実際何人かのGKの名前をクラブ側に提案している。

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