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内田篤人の1on1を徹底分析。世界で戦えるサイドバックの“個の力”とは?【中篇】ポジショニングを制する者は1on1を制す!

text by 河治良幸 photo by Asuka Kudo / Football Channel , Ryota Harada

シャルケで表れた変化

藍澤:では、攻撃時のポジショニングについても教えて下さい。

河治:はい。攻撃のポジショニングは、チームのスタイルにもよりますが、基本的に内田選手は上がらないです。鹿島にいたころなんかはガンガンあがることを売りにしていましたが、シャルケにいる今は殆ど上がらない。なぜあがらないかというのには2つの理由があるんです。

 まずひとつは左サイドバックにいるフクス選手が見境なくどんどんあがってクロスを上げることを得意としている選手なので、内田選手まであがってしまうとセンターバックの選手が孤立してしまう。だから、ちょっとバランスをとりながら動いているって事ですね。

 ボールをまわす段階ではサイドバックって攻撃のスタートなので、自分のサイドにボールがある時はセンターバックの選手よりはちょっと前にでて縦にもだせるしちょっと斜め後ろへのパスでセンターバックの選手を使うこともできるところにいる。真横へのパスって出しにくいんですよ。相手につめられ易くなってしまうので。

 でもそこでちょっと距離があることによって、相手が詰め切れなくなる。斜め後ろへのパスを出すことによって、横パスを狙う相手との間にスペースができるので、受け手であるセンターバックに前を向かせてボールを持たせられるという事になります。

 逆に敵が必要以上に斜め後ろに位置するセンターバックについていくなら、横にいるボランチだったり、斜め前にいるオフェンシブな選手にボールが出せますよね。

 そして、逆のサイドにボールがある時。フクス選手がすごく上がっていく時には、内田選手はディフェンスをケアする位置にいます。でもシャルケっていうチームは全体的に高い位置をとるので、内田選手のポジショニングも必然的に高い位置になります。それによって守備のケアといざこっちにボールが出たときにオーバーラップができる、その両方に対応できるというポジショニングをとっています。

藍澤:なるほど。ではもう一つの理由はなんでしょうか?

河治:もう一つの理由は、単純に右のウイングにいるファルファン選手がすごく個人での突破力があるから、この選手が一対一をするとき内田選手はわざわざ回りこんでサポートする必要はない、という事です。

 それよりはファルファン選手が突破をしにいってボールを失ったときにすぐフォローできる位置にいる。あるいはルーズボールになったときなどに拾ってミドルシュートに行くとか、中央にいるドラクスラー選手とかにボールを預けるという事が出来るポジションを取ります。

 常にファルファン選手を追い越すよりは、後ろでサポートしながら、相手に奪われた時にはつぶしにいったりステイして下がって遅らせたり、ほかの選手にうながしたりできるポジションにいるという事ですね。

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