スタジアムには独立運動の指導者の名が
今回会場になる「カラジョルジェ・スタジアム」は、セルビア第二の都市ノヴィ・サドにある。北部ということで冬場はけっこう雪も降る。
今年の春先は全世界的な異常気象で、3月末にもかかわらず大雪になった。ここカラジョルジェ・スタジアムでは、セルビア対スコットランドのW杯予選が行われたのだが、前日に振った雪がピッチを覆い、試合が出来る状態ではなかった。
そんな中、スコットランドサポーターが「生脚にキルト」という出で立ちで除雪作業に協力したというニュースが話題になった。早めに会場入りしていた30名ほどの(巻きスカート)のハイランダーたちが、大会スタッフとともにスコップを持ち、慣れた手つきでピッチや客席の雪をかいたという。
この日、カラジョルジェ・スタジアムにはスコットランドから1200人以上のサポーターが来ていたとか。試合は2-0でセルビアの勝ちだった。
スタジアム名のカラジョルジェ(Karađorđe)には、「黒いジョルジェ」という意味がある。これは「セルビア蜂起」のリーダー、ジョルジェ・ペトロヴィチの異名である。
セルビア蜂起とは、オスマン帝国支配下のセルビアで発生したセルビア人らによる独立運動のことで、カラジョルジェは、第一次セルビア蜂起(1804年 – 1813年)での指導者であり英雄だった。
カラジョルジェ自身は成り上がりだったのだが、その一族からはたくさんの指導者や君主が輩出された。その末裔が現在もベオグラードの旧王宮に住んでいる。彼の名は、アレクサンダル2世カラジョルジェヴィッチという。なんでも、セルビアにおける立憲君主制の樹立を提案しているとか。
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