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Jリーグ 11年前

噂される「ベストメンバー規定」の大幅な規制緩和。その内容と実際の運用は?

text by 川端暁彦 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

クラブに任せなければやれるようにならない

 この規定の存在自体が若手の育成を阻むという声が、特に現場の指導者には根強くあった。現場に限らずJリーグ側にも両論があり、近年はACL出場クラブがACLの試合日前後5日間以内に行う試合について同規定の適用を免除されるなど、徐々に(だが確実に)規制の緩和が進んでいる。

 来季以降にはさらに大きな規制緩和が施されるという声もあり、最終的に規定は骨抜きになっていくのではないかとさえ言われるようになってきた。

「せっかく来たのに、お目当ての中村俊輔がベンチにもいなかった…」というスター選手不在によるダメージを懸念する声もある。確かにそれはダメージだろう。だが、そもそもこれは現在の規定では抑止できないので(11人中6人以上ということは、最低でも5人は落とせるのである)、議論しても余り意味のない話である。

 もちろん「リーグ側で出場義務付け選手を規定するなど、もっと厳しくベストメンバーを定めるべきだ」という極論をお持ちの方もいらっしゃるのかもしれないが、こうなってくるとまったく賛同できない。

 極端な話を言えば、規定が存在しなければ、特別指定選手の高校・大学生とユース所属の2種登録選手をズラリと並べるといった行為も可能にはなる。ただ、そうした行為によって惨敗してファンを失って損をするのはクラブ自身。

 逆に、主軸に代わって若手を起用して、その若手が起用に応えていくようなら、ファンの満足度はむしろ上がってクラブは得をすることになるだろう。これはクラブ側がそうしたリスクとリターンの両方を鑑みたうえで、「自分のお尻は自分で拭きなさい」という話でしかないのではないか。

 この話に限らないが、Jリーグはその成り立ちからして「Jリーグが決めてあげなければいけない。クラブ任せではいけない」という意識が強いのだが、「任せれば意外にちゃんとやれるし、任せなければやれるようにもならない」とも思うのだ。

 ベストメンバー規定はその典型で、この緩和が進むというのは、クラブ側の成熟をJリーグが認めた証とも言えるのかもしれない。

【了】

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