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内田篤人 10年前

シャルケの守備崩壊を救った内田篤人。ディフェンスの“エアポケット”を埋めた巧みなポジショニングとは?

text by 河治良幸

目立ちはしないが、絶妙だった内田のポジショニング

シャルケの守備崩壊を救った内田篤人。ディフェンスの“エアポケット”を埋めた巧みなポジショニングとは?
守備のエアポケット、つまり「シャルケの守っていない場所」になっていた

 この日はトップ下を本職とするボアテングが右ウィングを担っていたが、彼は前からの守備意識こそ低くないものの、自陣まで下がっての守備をメインのタスクとしていないため、内田が1人で右後方を守る時間が多くなる。

 その状況で自分のサイドを守り切ることも決して容易ではないが、さらに内田にとって厳しかったのはボランチの構成だ。

 この試合では左サイドバックが本職のアオゴがボランチの一角を務めており、アンカータイプのノイシュテッターはセンターバックの手前を固定的に埋めるため、右サイドと中央の間が常に守備のエアポケット、つまり「シャルケの守っていない場所」になっていたのだ。

 そこをシュルツがカットインで突く分には内田が直接マークできるが、問題はトップ下のベン・ハティラやボランチの細貝が流動的に狙ってきた時だ。

 内田が見事だったのは、シュルツの動きをけん制しながら、そのエアポケットに人が入ってくる前に、素早くポジションを移動して埋めていたことだ。もちろん、その場合は瞬間的に右サイドのライン際が空いてしまうわけだが、より危険な場所を守るために持ち場を捨てていたのだ。

 その動きによってスルーパスをカットするなど、ヘルタの決定的なフィニッシュワークを直接阻止できたシーンもあれば、そこを突かれる危険を事前に摘んだ局面もあった。ヘルタでは積極的な飛び出しが目立つ細貝がなかなか前に出きれなかったことも、内田の柔軟かつ勇敢なポジショニングと無関係ではない。

 実に8試合ぶりの無失点勝利を飾ったシャルケだが、守備陣が奮闘する中で、内田の目立たないがクレバーなポジショニングが“堅守”のエッセンスになっていたことを特記しておきたい。

【了】

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