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プレミアで実現した南ウェールズ・ダービー。なぜイングランドに“他国”のクラブが参戦しているのか?

text by 山中忍 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

プレミアがもたらす経済効果

 そのイングランドで名を成した場合、母国とは比較にならない経済的効果は、スウォンジーの例を見れば一目瞭然だ。BBCの調べによれば、2年前のプレミア昇格だけで、約90億円相当の効果を地元経済にもたらしたとされる。

 駅前の商店街にも空き家が目立つ街の住民にすれば、それこそ「プレミア様々」だ。ウェールズ政府もプレミア入りを大歓迎。たとえテレビでも、スウォンジーとカーディフのホームゲームを観たことのある者であれば、『visitwales.com』とある政府のスポンサー広告板を目にしているはずだ。

 今季後半の2月に行われる、通算107回目の南ウェールズ・ダービーは、今回にも増して、ライバル意識剥き出しの一戦となるに違いない。ダービーでは、ホームとアウェイの双方で宿敵を叩く“ダブル”が勲章となるが、両軍はまだ手にした経験がないのだ。

 カーディフは、ダービー史に残る栄誉を懸けてスウォンジーは雪辱を期してリターンマッチに臨む。そしてその一戦は、プレミアの熱いダービーとして、再び世界各国に中継される。

 政治やサッカー代表の世界では、イングランドとの混合に抵抗を示すウェールズ勢だが、クラブ・フットボールの世界では、敢えて選んだイングランドのリーグで、母国の名声と富を懸けた、誇りある戦いが続く。

【了】

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