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香川真司 10年前

ルーニーが絶賛する“シンジ”。マンU進化のためにエースは“香川の本格化”を渇望する

シリーズ:フットボール母国の神髄 text by 森昌利 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

エジル獲得を希望した理由

 先月、ファーガソン前監督が自叙伝を出版した。そこで老将は、2010年南アW杯終了後、「ルーニーがエジル獲得を進言してきた」と明かしている。皇帝的だった前監督は、「それはお前が口を出す領分ではない」とぴしゃりとたしなめたが、このやり取りで「クラブに進化する意思がない」と感じたルーニーは移籍願いを提出した。

 この離脱願い提出後、クラブ(すなわちファーガソン監督)との手打ちに応じまでの経緯は、非常に興味深い話だが、別問題なのでここでははぶく。大事なのはクラブ離脱を考えるほど、ルーニーがエジル獲得を望んだという事実だ。

つまりチーム内で自分と連携できる選手の加入を望んだのだ。さらに踏み込んで言えば、そういう選手がユナイテッドに不足していたと感じていたのだろう。

 そして、もうひとつ、僕が重要だと考える発言が次のものだ。「僕らはふたりとも、身勝手なプレーをしない選手だから、チームを助けるためにプレーし、お互いにボール交換する、だから一緒にプレーするのが楽しいんだと思う」。

 ルーニーは自分と香川を「very, very unselfish players」(とてもとても身勝手ではない選手)と物事を強調する“very”を2度重ねて描写しているが、これも裏を返せば、チーム内にselfish(身勝手)な選手も多いということだろう。

 ユナイテッドのサッカーを見ていると、とくに格下相手の戦いで攻撃陣が連携を欠くシーンが多い。球離れの悪い選手が揃っているという印象だ。とくに中盤両サイドのナニ、ヤングはその筆頭で、バレンシア、新星ヤヌザイも1対1が得意で、好んで連携するタイプではない。

 ストライカーのファン・ペルシー、チチャリートことエルナンデスの2人は類いまれなフィニッシャーだが、前述したウインガー達と同様、連携タイプではない。ウェルベックが多少、意識してワンツーなどのリンクを見せる程度か。

 こうした“個人技はあるがわがままな選手が多い”攻撃陣の大黒柱として、ルーニーが最も足りないと感じているのが、連携なのである。

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