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サッカー本の「診察室」を開いた理由。『夢想するサッカー狂の書斎 ぼくの採点表から』佐山一郎氏インタビュー(その1)

text by 宇都宮徹壱 photo by Tetsuichi Utsunomiya

年寄りのコラムが長すぎるのが文化的な閉塞感を生んでいる

──書評といえば、佐山さんが『朝日』で書評の連載を持たれていたのは、2002年から09年までだったと思います。個人的にはもっと続いてほしかったと思っていますが。

佐山 最後の方は「あ、そろそろ終わりかな」って薄々感じるものです。フリーランスってそんなことの連続でしょ? ショッキングな戦力外通告の連続。一記事なんぼの世界で、でもそういう新陳代謝をしていかないと紙(雑)面が新しくならないんですよ。

 本当のメジャー紙メディアって、今はもう5つか6つくらいしかないと思うんです。そこでの年寄りのコラムが長すぎるっていうのが、文化的な閉塞感を生んでいるんだと思っています。

 若い人と交互に隔週連載で面白さを競ったほうが「再分配」につながるはずなんだけど、なんだか既得権益化していてうんざりさせられますね。クビにして恨まれるのが恐いんだろうね。

──さて、この本の骨子となっていたのが、『フットボールサミット』で連載していた『A REVIEW OF FOOTBALL BOOKS サッカー版「ぼくの採点表」』でした。これが全体の、だいたい半分くらいですかね?

佐山 いや、それ以上。過半数超えしています。

──そうでしたか。で、『サミット』のバックナンバーを読み直してみたら、連載開始が遠藤(保仁)特集の6号からなんですよね。そこで編集者の森さんにお聞きしたいんですけど、佐山さんに書評特集を定期的にお願いすることになった経緯は、どのようなものだったんでしょうか?

 佐山さんとお話する機会があったときに「最近の新刊評はダメだ。『サミット』でもっと網羅的にサッカー本を取り上げたほうがいいんじゃないか」って話になったんです。こちらとしては、ただ取り上げるのではなく、ズバッと点数もつけてほしいなと。最初は全部の本を取り上げるのは、そんなに難しくないと思っていたんですけど、意外や意外、毎月かなりの本が出ていて。

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