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代表 10年前

母国の誇りはどこへ? W杯抽選会で“強運”を願うイングランド代表の現状

text by 山中忍 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

悲観的ではないが、期待値は低い

 ドイツ戦の失点にしても、相手CKから、明らかな標的であるペア・メルテザッカーにフリーでヘディングを許した。ハートの数セーブがなければ大敗も現実的だった。そのハートは、マンチェスター・シティではミス連発でベンチ降格中。飛び出し癖もある代表GKとしては、手前には安定感のある最終ラインが欲しいところだ。

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テリーの代表復帰はあるのか?【写真:Kazhito Yamada / Kaz Photography】

 その上、ジャギエルカとケイヒルは、攻撃の起点としても、ファーディナドとテリーに劣る。ドイツ戦後に話題になったテリー復帰の是非は、自主引退の背景にあるモラル面のチーム事情を考えれば「非」となる。ホジソンも復帰要請の可能性を否定している。

 だが、不安定な最終ライン事情を考えれば「是」と言えなくもない。後進のクリス・スモーリングとフィル・ジョーンズは足下の技術も十分だが、両若手は、マンチェスター・ユナイテッドでCBとしての出場機会が不足している状態だ。

 12月6日のW杯組み合わせ抽選を控えたイングランドは、一般的に「良くてベスト8」という期待値の低さもあり、悲観的なムードではない。だが、不安は漂っている。抽選ポット4の一員としては、第1シード8カ国のうちスイスと同居できれば幸運だ。

 但し、若手の台頭が進むスイスとの対戦となれば、勢いのあるシェルダン・シャキリやグラニト・シャカが並ぶ敵の攻撃陣に、自国DF陣が苦戦しても不思議ではない。『サン』紙による母国の「ラッキー・グループ」には、アルジェリアが入っていたが、4年前の南ア大会でスコアレスドローに持ち込まれた相手だ。

 06年ドイツ大会と、02年日韓大会の前には、優勝を狙うために、それぞれルーニーとデイビッド・ベッカムの骨折完治を祈っていた国民は、ブラジルでのグループステージ敗退を避けるために、抽選会での強運を祈っている。

【了】

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