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連載コラム 10年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。菅原智の挑戦。果てしなき王国の魅力・その1

カーニバル中に菅原を招いたブラジル人とは?

 リオのカーニバルのように観光客でごったがえするのはごく一部で、ブラジル人はカーニバルを家族と過ごすのが普通である。浮かれた空気が流れる中、サントスの選手たちはちりぢりに帰省していった。

「スガ、カーニバルの4日間、どうするんだ?」。一人の選手から尋ねられた。
「何もすることがないので、ここにいる」
「じゃあ、俺の家に来るか?」

 菅原はその選手の車に乗って、サンパウロ州のカイエイラスという街に向かうことになった。車に乗ってから、菅原は不安になった。

(家族で過ごすというのに、いきなり訳のわからない日本人が現れるんだぞ。厚かましくないか)

 彼の家に着いてみると、両親の他、姉、親戚が集まっていた。その一人ひとりに紹介され、抱きしめられ、頬にキスされた。

 菅原の心配は取り越し苦労だった。彼らは初対面の菅原を本物の家族のように受け入れてくれた。

 このブラジル人選手とは、マルコス・アスンソンである。

 彼はこの後、イタリアのASローマ、スペインのレアル・ベティスなどでプレー、ブラジル代表にも選ばれている。マルコス・アスンソンは菅原にとってサントスで最も親しい選手の一人となった。

【次週へ続く】

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