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アジア 10年前

豪州で増す「日本サッカー」の存在感。小野伸二とQLD日本代表の試合を通じて見えたもの

text by 植松久隆 photo by Hisataka Uematsu

小野の試合を観戦した「クィーンズランド州日本代表(QLDジャパン)」

 試合後の本人の弁を借りれば、「(試合前の)アップでボール・コントロールしようと大きくステップを踏んだ時、ちょっと(脚のつけ根の)筋肉が張った感じがした」とのこと。自身で様子を見ながらのプレーだったが、「監督からこれ以上やると危ないと交代を言われ、大事を取った」ということでは致し方あるまい。

 試合は、小野を失ったWSWが決め手を欠き、後半ロスタイムにダメ押しの3点目を奪われ万事休す。WSWの今季無敗記録は「6」で途絶えた。

 この日のスタンドに、豪州で活躍する日本サッカーの“英雄”を、感慨深く見守る日本人サッカー選手の一団があった。彼らは、翌日(23日)に“日韓戦”を控える「クィーンズランド州日本代表(QLDジャパン)」の面々。

 ブリスベンのあるクィーンズランド州のセミプロ・リーグ所属選手で構成されるQLDジャパンの発足から編成まで、すべてオーガナイズしたのは、自身もBPL(豪州3部相当)でプレーする現役選手である三上隣一。

 実行力のある三上は自ら、今年、日豪サッカー協会(JAFA)を組織、2015年に豪州開催が決まっているAFCアジア・カップ2015の実行委とのコラボで、全豪でも初めてとなる「QLD 日韓オールスター戦2013」の開催にこぎ着けた。

 QLDジャパンが“日韓戦”の晴れ舞台を戦う前夜、かつて日の丸を背負い、今はAリーグのピッチで“日本”を背負って戦うレジェンドが、彼らの前でプレーする。豪州の日系コミュニティのサッカー事象を追ってきた身としては、ピッチ上の小野、スタンドのQLDジャパンを交互に見ながら、何とも因縁めいたものを感じさせられるのだった。

 そして日韓戦当日。雷雲がグランドを囲むものの不思議とスタジアムの上に雨は落ちない。会場となったブリスベン郊外のロッチデール・ローヴァーズ・スタジアムのスタンドは、立錐の余地も無いほどに埋まる大盛況。

 揃いのTシャツに赤いメガホンで「テハミング」の大合唱の韓国応援団は賑やかだが、数では負けない日本側も選手個人の応援ボードや日の丸を掲げた日系のサッカー少年達が負けじと声を張り上げる。

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