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サッカーから差別がなくなる日は来るか。依然として少ない同性愛カミングアウト

text by 鈴木肇 photo by Hajime Suzuki

増え続ける同性愛者への差別

「サッカー界における差別」と聞いて、大半の方は人種による差別を思い浮かべるのではないだろうか。人種差別問題は根強く残っており、毎年のようにファンや選手らが黒人選手などに差別的な言動をして罰金や勝ち点剥奪などの処分を受けるクラブが後を絶たない。こうした人種差別を撲滅するため、1999年にFARE(欧州におけるサッカーの人種差別反対行動)という組織が設立され、FIFAやUEFAと連携して様々な取り組みを行っているが、人種差別に関するニュースを耳にすることは少なくない。

 こうした人種差別と並んでサッカー界を悩ませているのが、同性愛など性的指向による差別だ。英国政府が昨年9月に発表した調査報告書では、同国サッカーファンのあいだでは人種差別よりも同性愛差別の傾向が高いことが明らかになった。

 この報告書によると、ファンの10%が「サッカーは人種差別的」と回答したのに対し、「サッカーは反同性愛的」という回答は25%にのぼっている。スタジアムに足を運んだファンの14%が同性愛に関する暴言を耳にしたことがあると答え、反同性愛のチャントは増えているという。

 同性愛差別に関するニュースも後を絶たない。たとえば、昨年のEURO(欧州選手権)期間中にイタリア代表FWアントニオ・カッサーノがゲイに対する差別発言をしたとしてUEFAから罰金処分が科せられた。

 2010年秋にはクロアチアサッカー協会のブラトコ・マルコヴィッチ会長(当時)が地元紙に対して「私が会長の椅子に座っている間は同性愛の選手が代表でプレーすることはない」とコメントし、のちに謝罪を要求されることに。

 2009年夏には当時イタリア代表を率いていたマルチェロ・リッピ監督が「チームに同性愛者がいたら機能しない」と発言し、波紋を呼んだ。最近では、昨年12月にロシアの名門ゼニト・サンクトペテルブルクのサポーター団体がクラブに対して黒人選手と同性愛者の選手を獲得しないように求めた。

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