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サッカーから差別がなくなる日は来るか。依然として少ない同性愛カミングアウト

text by 鈴木肇 photo by Hajime Suzuki

なぜカミングアウトしにくいのか

 ではその理由とは何か。考えられる点は2つ。ひとつ目は、「第二のファシャヌ」になってしまうこと、つまり周囲からの偏見や差別によってサッカー選手としてのキャリアはおろか、人生までもが台無しになってしまうことを恐れているのではないか。ファシャヌの場合、家族からも理解がなかったといわれている。

 ヒセーンの父グレンはリバプールに在籍していたときにファシャヌの弟と何度か対戦したことがあり、当時のことをよく覚えているという。「あの野郎は私にこう言ったんだ。『ファシャヌの弟であるということを知られたくない。兄はゲイだから』とね」。

 ふたつ目は、男性に対するステレオタイプなイメージ、つまり「頑健な肉体こそ一番」「セックスや暴力、アルコール消費が大事」という「マッチョ文化」だ。これは米国を筆頭に一部の国や地域に根付いている文化であり、何もサッカー界に限ったことではないが、この固定観念的な考えが男子選手のカミングアウトを阻んでいると考えられる。

 エーク氏も「男子選手がカミングアウトしないのは、マッチョ文化を恐れているからだ」とコメント。イングランドのマンチェスター・ユナイテッドに所属するデンマーク代表GKアンデルス・リンデゴーが昨年11月、自身のブログにて「サッカー界における同性愛」という記事をアップ。そのなかで以下のように記している。

「サッカー界において、同性愛はタブー視されているテーマ。ピッチと観客席の雰囲気はタフだ。その構造は原始的で、真の男たるものは勇敢で強靭、かつアグレッシブで忠誠心がなければならないという古典的なステレオタイプによって表現されることが多い。そして、それらはサッカーファンが同性愛者に対して抱くイメージとは異なっている」

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