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サッカー番記者はなぜ監督を強く批判できないのか?

text by 海江田哲朗 photo by Asuka Kudo / Football Channel

ラモス批判をした理由

 私には気負いがあった。というのも、01年から東京Vはとかく監督が長持ちせず、手詰まりとなったら即座にクビが飛んだ。そこで、一歩先んじるメディアの出る幕はないに等しかった。

 03年6月、アルディレス氏が監督に就任。一時はリーグ戦で優勝争いに絡み、04年には天皇杯決勝でジュビロ磐田を2-1で撃破し、8年ぶりのタイトルをクラブにもたらした。

 優勝争いのダークホースとして臨んだ05年は、夏場になって急激に失速。第13節、ガンバ大阪戦(1-7)。第14節、浦和レッズ戦(0-7)。私は凄惨な状況を伝えるだけだった。敗戦を残念がり、それでもどこかに光明を見つけ、うろたえ、惑い、気づいたら奈落にいた。

 その頃、私は「炭鉱のカナリア」(ガス漏れなどの危険をいち早く感知する)が番記者の役目だと偉そうに書いた。理想としては正しい。だが、口で言うのと実際にやるのとでは大違い。カナリアはまだピンピンしているのに、肝心の鉱夫がほぼ全滅しているという有り様だった。

 ひたすら流れに翻弄されまくり、メディアの役割をまったく果たせていない。以後、同じことはしたくないと思った。ならば、積極的にリスクを背負うやり方に変えていくしかない。07年の監督人事にまつわる出来事は、それがまるっきり裏目に出たものだ。

 J1昇格を置き土産に東京Vを去ったラモス氏については、再度ほかのクラブでの仕事ぶりを見てみたいが、あいにく実現してない。昇格のミッションを達成しながら継続せず、その後もJクラブで指揮を執っていない唯一の監督だ。

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