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香川真司 10年前

香川の交代で狂ったリズム。現地識者は「マンUはモイーズによって退化した」と敗戦の指揮官を非難

text by 内藤秀明 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

モイーズの監督の意図と機能しなかった理由

 モイーズ監督は、58分に香川を下げたのと同時に、ラファエルも下げ、ドリブルで違いを作るナニとアドナン・ヤヌザイを投入した。ラファエルが抜けた右サイドバックの位置に、元々右ウイングだったバレンシアが入り、右ウイングにヤヌザイ、左ウイングにナニが入った。そして前線の2枚はダニー・ウェルベックとウェイン・ルーニーという構成だ。

 この交代の意図は、「サイドはウイングとサイドバックだけ、もしくはウイングの個の力で崩し、残りの選手はペナルティボックスに飛び込め」というものだったのだろう。

 結果、香川がプレーしていた時間帯には、パスによる連携が多かったが、ナニとヤヌザイが入って以降はドリブルによる仕掛けが増える。ただし、エバートンの集中した守りもあり、ドリブル突破からの効果的なクロスを多くいれることが出来なかった。

 そうしたことで、前半には見られた効果的なペナルティボックス侵入が減っていき、攻撃のよいリズムを損なう原因となってしまった。

 この日に関してモイーズ監督の攻撃面で変化させようとする試みはうまくはまらなかったのだ。

 そして、停滞感がピッチ上で漂いはじめた86分、モイーズ監督によって右サイドバックに変えられてしまったバレンシアのミスもあり、ユナイテッドはエバートンに試合終盤の先制点を許す。

 元々バレンシアはサイドバックの選手ではないため、守備の場面でボールウォッチャーになり、ピンチの芽になることが過去何度もあった。この日もその悪癖が出てしまい、ボックスの中でルカクによって放たれた強引なシュートは、バレンシアの目の前まで流れてくるが、反応せず流そうとする。すると、バレンシアの死角から飛び出てきたエバートンの左サイドバック、ブライアン・オビエドが反応しゴールに流し込んだ。

 こうして、モイーズ監督の采配は、攻撃面で違いをもたらすことができず、むしろ失点の原因となってしまった。

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