試合終了のホイッスルが鳴り響くと、大木武はすぐにコーチングスタッフたちと握手を交わし、ベンチ前で佇んだ。そして、ピッチ上で喜びを爆発させる徳島ヴォルティスの選手たちを茫然と眺めていた。その時間、約2分ほど。微動だにしなかった。

　ときおり、クラブ関係者が握手を求めると、大木は口を真一文字に結んだまま、しかし、丁寧に応えた。そして、また腕を組み直し、ピッチ上を見つめ続けた。

　大木はあのとき、何を思っていたのだろう。