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“同情票”でクリロナ有利。それより論ずべきは“人気投票”と化したバロンドールの本当の価値と存在意義

バロンドールの授賞式が迫っている。最終候補はリオネル・メッシ、クリスティアーノ・ロナウド、フランク・リベリーの3人。欧州ではFIFA会長の失言で票が動いたという。そしてそれより論ずべきは、この賞の価値と存在意義だ。

text by 山本美智子 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

FIFA会長の信じがたい失言

 バロンドールの受賞式が迫っている(13日)。昨年10月末にFIFAのジョセフ・ブラッター会長が、多くの招待客とマスメディアを招いている檀上で、クリスティアーノ・ロナウドが常に格好をつけていることを茶化すというFIFA会長にあるまじき失態を犯したのは、まだ記憶に新しい。

 こともあろうに、それは受賞者ノミネートリストが発表される前の週の出来事であり、ブラッター会長は「片方は、もう一方より、美容院代によりお金をかけている。だが、どっちが優れているとは言えない。リストは来週、発表されるし、彼らが決めることになるだろう。私はどっちも好きだが、どちらかといえばメッシの方が好きだ」と発言したのだ。

 その後の騒動は周知の通りだが、その中でも最も重罪なのはブラッター会長が自らの失態の後、バロンドールの投票期間を延長したことだ。ワールドカップ予選があるからと11月29日だった投票期間を12月9日まで伸ばしたのだ。ワールドカップ予選の日程など、とっくの昔に決まっていたというのにだ。

 バロンドールは前年を通して、1年間、最も活躍した選手に与えられる賞だ。今更、ワールドカップ予選の1試合で大きく変わるものではないが、あのブラッター会長の失態の後で、投票に迷っていた人々からロナウドへの同情票が増えたことは想像に難くない。

 代表監督にしても、監督である前に一人の人間なのだ。やはり、受賞にノミネートされているフランク・リベリーは、今回の決定を「恥だ。過去にこんなことは起きたことがない。(自分にとっては)デメリットだが、僕に恐れるものはない」と発言しているが、これは正直な気持ちだろう。

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