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高校サッカー心を揺さぶる物語。3年間、選手と共に戦った女子マネージャーは監督の娘

text by 安藤隆人

初戦敗退、止まらない涙

 
 でも、そんな日々も終わりを告げるときがくる。最後の選手権。予選を突破して、本大会への出場を決めた私たちは、優勝候補と言われるほど注目されていた。だけど、結果は初戦敗退――。

 試合終了間際、私はベンチで控えの仲間たちと肩を組んで、ピッチを見つめていた。

「みんな、大丈夫! 大丈夫! 絶対に勝てるよ!!」。必死で笑顔を作っていた。
 
 試合終了を告げる笛が鳴った瞬間、私は泣いてしまった。すぐに涙を止めなきゃって思ったけど……、止まらなかった。「もっとみんなと一緒にいたかった」っていう気持ちが抑えきれなかった。

 私には後悔していることがあった。夏のインターハイで敗退したときのことだ。私は負けたことがショックで、一生懸命戦ったみんなに、「次があるよ、みんながんばったよ」って言ってあげるまでに時間がかかった。選手を励ますのがマネージャーの務めなんだと、後悔していた。

 だから、このときもすぐに言葉を掛けなきゃと思ったのに、涙が邪魔をして言葉が出ない。

「さっちゃん、3年間ありがとうね」

 泣いている私に声をかけてくれたのは、キャプテンの貴博くんだった。私より選手のほうが悔しいはずなのに……。

 試合後のロッカールーム。監督は、泣きじゃくる選手たちをじっと見つめ、静寂を破ってこう語りかけた。

「みんな、ここで終わりじゃない。人生の節目の一つなんだ。次のステージで精いっぱいがんばってくれ。これまでお前たちはいろんな人に支えられてきたんだから、感謝の気持ちは忘れずに生きていってほしい。ここでの経験は財産なんだから」

 お父さんだってショックだし、本当は悔しいはず。マネージャーとして、娘として、ずっと一緒にいたから、お父さんの気持ちは手に取るようにわかった。やっぱりお父さんは素晴らしい監督だった。誰よりもみんなのことを愛し、懸命に指導してくれた。偉大なる存在なんだと、あらためて感じた。

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