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アジア 10年前

なぜカンボジアでプロに? 日本人選手第1号・太田敬人が考える“サッカーと人生”

text by 長沢正博 photo by Masahiro Nagasawa

サッカー普及でカンボジアの子どもたちに恩返しを

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太田は子どもたちへのスクール事業も行っている【写真:長沢正博】

 太田は2012年、シンガポールでサッカースクールなどを開くGFAと共同で、「グローバルフットボールソリヤ」(ソリヤは太陽の意)という法人をカンボジアに設立。プノンペンを中心に子どもたちのサッカースクールや個人参加型のフットサル事業、孤児院や学校でのサッカー普及活動などを手掛けている。

 中でもサッカー普及活動には思い入れがある。きっかけはチームが優勝して現地での知名度が向上したことだった。

「一緒にボールを蹴るだけで、子どもたちが喜ぶんですよ。それで子どもたちにもっと喜んでもらいたい、元気を与えられたらと始めたんです。カンボジアのプロサッカー選手として、カンボジアの子どもたちに一番恩返しをしたい。彼らの将来に役立てられるよう、サッカーを切り口に日本とカンボジアをつなげていきたい」

 その活動には日系企業もサポートに付いた。今後、カンボジアは経済成長に伴う消費市場の拡大が期待される中、企業もスポーツを切り口にしたマーケティングを模索してきている。

 例えば、ある地方で子どもたちのサッカークリニックを開き、その数カ月後に大会も開催したが、クリニックで配られた企業名入りのシャツを大会まで大事に着ていた子がいた。企業の地方への露出、マーケティングという点でも有効だった。

「選手ができる間は、できるだけ長くやりたいんですけど、ゆくゆくはできなくなるので、その時までに何か残しておかないと、という思いもあります。サッカー全般のビジネスというか、良い事をしてお金を得る仕組みをどんどん考えたい」

 ずば抜けて年俸が高いわけではない。それでも、「今は本当に自分がやりたいことをやって、好きなことをやればやるだけお金がもらえる。選手としても、会社としても24時間、サッカーのことを考えていられるので、すごく面白いです」と充実感をにじませる。

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