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香川真司 10年前

恩師クルピが香川に移籍の勧め「できるだけ早くマンUから離れるべき。時間を無駄にするな」

text by 沢田啓明 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography , Hiroaki Sawada

香川の持つ、テクニックよりも大きな長所とは?

「初めてシンジを見たときのことは、良く覚えている。当時は控え選手だったが、紅白戦で見て、すぐに『これはとてつもないタレントだ』と確信した。

 日本では、『まだ若いから、もっと時間をかけてじっくり育てて…』という考え方をする人が多いようだ。

 そのような発想は、私にはない。ペレは16歳でサントスからデビューしてブラジル代表に入り、17歳でW杯を制覇した。そういう国から来た者にとって、日本人がなぜ年齢にこだわるのか、理解に苦しむ。

 シンジの持ち味は高度なテクニックと豊富なアイディアだが、もっと大きな長所がある。それは、志の高さだ。若い頃から『世界トップの選手になるんだ』という夢を持ち、それを実現するため、常にブレることなく努力を続けてきた。それは、曖昧な願望ではなく、確たる目標としての『夢』だ。

 本田(圭佑)、長友(佑都)らもそうだが、才能の有無もさることながら、強烈な向上心を持つ選手だけが世界の頂点にチャレンジすることができる。これが欠けていたのが、以前の曜一郎(柿谷)だ。ただし、今は全くの別人。強い向上心こそが、彼を急激に成長させる原動力となっている。

 常々、私は『シンジは日本のフットボールが生んだ最高の才能』と考えている。『夢』を持ち続ける限り、シンジはさらに成長する。

 彼の心の中に、『せっかく偉大なクラブに入ったのに、このような形で退団するのは悔しい』という感情があるかもしれない。それは自然な思いであり、間違ってはいない。

 しかし、自分が好ましくない状況に置かれ、そのような状況を打開するのに自力よりも他力が重要である場合、環境を変えることは最良の選択でありうる。また、それは決して恥ずかしいことではない。

 フットボーラーのキャリアは短い。時間を無駄にするべきではない」

【了】

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