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【特別対談】加部究&幸野健一:理不尽が横行する高校サッカーの非常識。真の「プレーヤーズ・ファースト」が浸透するために必要なこと(その4)

シリーズ:【特別対談】加部究&幸野健一 text by 森哲也 photo by Kiwamu Kabe , editorial staff

テーピングをしてまで出場する意義はあるのか?

――子どものころからプロになることが明確な目標としてあったんですね。

幸野 そうです。僕が手取り足取り導いているように思われがちですけど、違います。

加部 そうなんですよ。親が自分のロボットみたいに扱っていると見られる傾向はありますよね。

幸野 僕は彼にあまり迷惑をかけたくないから、できるだけ彼と切り離している。僕の持っているサッカーについてのビジョンがありますが、あまり彼に影響は与えたくありません。それは気をつけています。

――加部さんはどうですか。

加部 自分の子供を人質に取られているのに、よく書けるね、と言われることがありますが、別に僕自身、育成問題について特別なことを書いている意識はないんですよ。日本協会では、U-18候補の合宿をケガで辞退した未蘭が選手権に出ているじゃないか、と不平の声が出たそうですが、だったら日本協会が山梨学院大付属高校に注意をするべきでしょう。

 選手権だからと、骨折している未蘭をピッチに立たせるのはおかしい。そんなことは当たり前のことでしかない。でも育成の現場を見ていて思うのは、育成年代は無理してはいけないという、ごく基本的なことが浸透していないということです。

幸野 テーピングをしているような選手が試合に出ちゃいけませんよね。そもそも育成年代でそこまでして試合に出るのはダメに決まっている。育成が終着点じゃないんだから、そんなに無理をする必要はないんですよ。

加部 チャンピオンズリーグの決勝レベルですら、コンディションが整わない選手は使わない方向に行っているのに、育成年代なんか言うまでもないでしょう。

幸野 僕が言いたいのは、それをやらせてしまう晴れ舞台すぎる環境が、監督の考え方を狂わせてしまうところもあるわけです。だから、すべての責任を監督だけに負わせるのは酷だということです。やっぱりシステムを根本的に変えないと難しいですよ。5万人も6万人も入るような決勝戦の舞台なんて晴れ舞台すぎる。

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