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連載コラム 10年前

W杯前に知っておくべきブラジルフッチボール。謎の企業“トラフィック”はサッカーの敵か、味方か(その4)

恵まれた施設を創設した理由

 象徴的だったのが、CFZ周囲の風景だ。施設が出来上がったときは、周りに建物はなかった。大通りを走って、草むらの辺りを曲がる、といつも記憶していた。毎年施設を訪れるごとに、辺りには建物や商業施設が増え、草むらはとうの昔になくなった。施設の一帯は今や建物がぎっしり並んでいる。

 ブラジルに出現した中産階級の人間は、日本と同じように金を払ってサッカーを学ばすことに抵抗はなかった。そして、ジーコの後に、多くの元選手がサッカースクールを開くようになった。

 ブラジルの大都市では、子どもたちが自由にボールを蹴ることの出来るストリートは減った。もはや、ブラジルのクラッキ(才能ある選手)はストリートから産まれてこない。

 素晴らしい練習施設を持つ、デスポルチーボ・ブラジル(DB)はそうしたブラジルサッカーの潮流の中にある。

 DBを運営するトラフィックのラファエル・ケイロス・ボテーリョは大学を卒業後、弁護士として、ブラジルで著名な弁護士事務所で働いた。トラフィックはその弁護士事務所の顧客だった。そして2002年年からトラフィックで働くようになった。

「ぼくがここに来た2002年と比べると、ずいぶん状況は良くなった。ただ、ブラジルのサッカービジネスはまだ改善の余地がある。一番の問題はサッカーのマネージメントに関わる少なくない人間がアマチュアだということだ」

 その一つの例として、サッカークラブの育成環境を挙げた。

「ブラジルのサッカークラブの寮は一般的にいい環境ではない。部屋は狭く、非衛生的だ。食事に関しても育成年代に必要な栄養バランスが考慮されているわけでもない。そんなところに若く才能ある選手を押し込めてきた。

それでもブラジルからは多くの選手が産まれてきた。我々のトレーニングセンターには広く、清潔な寮がある。食堂では毎日たくさんの料理が準備されている。だから、私たちはこれからもっと良くなっていく。W杯が私たちの後押しをしてくれることだろう」

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