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本田圭佑 10年前

セードルフからの絶大な信頼感の証左だが――。故障明けの本田を強行出場させた“急造監督”の限界

text by 神尾光臣 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

病み上がり。明らかに走れていなかった

 序盤は頻繁にボネーラのサポートに回り、ボール奪取にも度々成功していた。だが徐々に、遅れが目立ってくる。21分、オーバーラップを仕掛けるドドの動きに反応が遅れ、ルーズボールを先に触られミドルシュートを打たれてしまう。そして40分にはオーバーラップを仕掛けたドドに手を掛けて倒してしまい、イエローカードを貰う。

 前半終了間際、ピャニッチのスーパーゴールで先制したローマは、さらにパスを流麗に回してせめて来る。そして20分、カウンターからドドがペネトレートを図ってくると、本田はこれを逃してしまい、失点につながった。ファウル覚悟で当たりに行くという選択肢もあっただけに、結果的には前半の警告が高く付いたということになる。

 また、サイドで生ずる数的不利は、攻撃の上でも堪えた。本田がボールを保持し、サイドを起点にパスを放っても、受け手が常に囲まれてしまうのである。また彼自身がドリブルから仕掛けようとする際にも、常に2人が寄せてスペースを消してきた。

 このタイトな組織守備が現在リーグ最少失点を誇る堅守の秘訣で、その中でチャンスを作るのは、簡単は話ではなかった。

 精力的にやっているとはいえ、サイドで攻守を務めた経験はまだまだ少ない。その状態で強豪と当たれば、劣勢になることも当然起こりうる。何より2週間実戦から遠ざかっていた関係で、最近の試合と比較しても明らかに走れていなかった。

 そんな状態でありながらセードルフ監督は本田を頭から行かせ、しかも80分間プレーさせたことに何の躊躇もなかったことが気にかかる。

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