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日本代表戦と同時刻に少年サッカーの試合が。大人の都合でW杯を観戦できない子どもたち

text by 植田路生 photo by Getty Images

場所確保の難しさ。だが、絶対に不可能なことなのか?

 協会内部の人も試合を見たいはずだ(見たくない人が協会にいていいとも思えない)。ことを難しくしてしまったのは、ピッチ確保の厳しさだ。幸野氏が普段プレーする中央区リーグでは区内にピッチ(グラウンド)が一つしかなく、それも東京五輪の選手村をつくるためになくなってしまうという。

 都市部でサッカーをプレーする環境が圧倒的に少ない。スケジュールを調整しにくい大きな要因だ。実際にピッチの予約を長年してきた経験がある幸野氏も「大変なんですよ」と、その苦労は知っている。

 だがこんなことは考えられないだろうか。6月15日、台風がきたら、あるいは大雨でも雷でもいい。当然試合は中止。別日にやるはずだ。つまり、日程の調整は絶対にできないことではない。

 W杯は夢の舞台だ。この試合を見られるか、見て感動を共有できるかどうかで子どものサッカー人生を左右すると言っても過言ではない。子どもたちも見たい、指導者も見たい、保護者も見たい、その試合の審判も見たい。そんな状況で行った試合に一体何の意味があるというのだろう。

 サッカーとは予測不可能なスポーツだ。ボールの行方、相手の出方、常にイレギュラーに対応しなければならない。今回のケースもイレギュラーな事態だ。日本に豊かなサッカー文化が根付くためには、ピッチ外での対応力も磨いていくべきではないか。

 もちろんスケジュール調整、場所の確保の大変さは承知している。だが、どこにプライオリティ(優先)をおくかを今一度考えて欲しい。子どもたちの未来を考えれば、これほどポジティブな苦労もないはずだから。

【了】

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