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自国開催W杯での優勝は64年前のリベンジ。ブラジル国民が決して忘れない“マラカナンの悲劇”とは

text by 沢田啓明 photo by Getty Images

先制しながら逆転負け。全国民が悲嘆に暮れた「マラカナンの悲劇」

「ブラジルの得点はオフサイドだった」と主審に強硬に抗議し、この主張は認められなかったものの地元観衆とブラジル選手を精神的に揺さぶった。そして、「勝負はこれからだ。絶対に勝つぞ」とチームメイトを叱咤激励した。

 ウルグアイ選手が奮起し、猛然と反撃する。後半21分、快速右ウイングのギッジャが右サイドを突破して絶妙のクロスを入れ、MFスキアフィーノが直接決めて同点。

 このとき、スタンドはそれまでの大騒ぎが嘘のように静まり返った。引き分けでもブラジルが優勝するにもかかわらず、予想外の展開に衝撃を受けたのである。

 ウルグアイはさらに攻め続ける。そして後半34分、運命の時が訪れる。

 ギッジャが再び右サイドを引きちぎる。ブラジルのGKバルボーザは最初の失点と同様、クロスを予想したが、ギッジャはその裏をかいて直接シュート。一歩前へ出ていたバルボーザは戻り切れず、ニアポストと体のわずかな隙間を抜かれてしまった。

 その後、ブラジル選手は必死の反撃を試みるが、ウルグアイ選手が体を張って食い止め奇跡的な逆転勝ちを収めた。ブラジルは手中にしたかと思われた世界王者のタイトルを逃し、全国民が悲嘆に暮れた…。これが、「マラカナンの悲劇」のあらましである。

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