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暴走はなぜ止まらないのか?「新国立競技場問題」の核心(その3)

text by 佐山一郎

文科省がソフトに疎く文化果つる神宮界隈

暴走はなぜ止まらないのか?「新国立競技場問題」の核心(その3)
国立競技場建設計画の中心人物であった建設省関東地方建設局(当時)の角田栄氏。(写真は『国立競技場十年史』より転載)

佐山 実は、今度の『国立競技場の100年』で初めて設計者の名前を知る有様で恥ずかしく思っています。第六章『復興の槌音』中の「明治神宮外苑競技場の解体」の項に、名前が出て来ますね。

「一九五六年六月一二日には基本設計が完成。一二月までに建設省関東地方局による実施設計も完了した。設計を担当したのは、関東地方建設局の角田栄第一課長だった」──と。

 もう一つは、第七章『東京オリンピックの開催』中の「国立競技場の拡充工事」の項で、「一九五七年竣工の国立競技場の総工費一四億五○○○万円に対して、拡充費一三億円程度という大改装計画だった。/実施設計は、国立競技場を設計した建設省関東地方建設局の角田栄第一課長が再び担当。拡張工事(正式名称は「国立競技場拡充工事」)の着工式は一九六二年三月三〇日に行われ、本格的な工事は年度が変わった同年四月から開始された」──とある。

 角田氏は、いわゆるガバメント・アーキテクトで、設計の中心人物ということだったと思うんだけど、50年前と、今度のずさんなコンペの事情とはずいぶん違うものだなあと、うたた今昔の念に堪えない。ただ、今は国土交通省というよりは文科省マターでしょ。文科省がソフトに疎いようではもう文化果つる神宮外苑界隈ですよ。

後藤 国立競技場のデザインをしたと言われている片山光生というモダニズムを代表する建築家も、やはり建設省の人なんです。ただ、片山の名前は同時代資料にはまったく出てこないし、角田さんも片山さんのことにまったく言及していないんですね。そんな訳で、この本では片山についてはまったく触れていません。どういう事情があったのか、このへんは、建築史家に調べてもらいたいですね。

佐山 自分の試合や観戦で忙しくて日頃あまり本を読まない人も、この本だけは是非読んで欲しい。100年分の歴史が収められていて、2500円+税なら絶対お安いですよ! とPRする俺はジャパネットたかたか(笑)。

【了】

※本稿は『サッカー批評issue66』(双葉社刊・2014年1月10日号)掲載の原稿(◎構成・佐山一郎)に一部補筆したものです。本稿の文責は佐山一郎。

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