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タミル・イーラムや南オセチア、ダルフールなど。FIFAから閉め出されている代表チームによる、もう一つのW杯

text by 実川元子 photo by 実川元子

独立「国」でも加盟承認されない不満

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試合後に南オセチアの選手はダルフール・ユナイテッドが帯同した難民キャンプの子供と一緒に勝利の喜びを分かち合った

 グルジア共和国北東部、カフカース山脈南側の山岳地帯にある南オセチア共和国は、91年にグルジアからの独立を宣言。国民の大半がオセット人というイラン系民族の正教徒だ。選手はスキルがあり、パスをつなごうという意識が強かった。結果は4位。

 同じくグルジア西部でロシアと国境を接しているアブハジア共和国も91年に独立を宣言。アブハズ人が大半を占め、公用語はアブハズ語とロシア語。小柄ながらスピードのある選手を要所に配し、大柄でテクニックに長けたワントップのエースにクロスを入れて点を取らせる戦術で戦った。「ビザ取得に苦労し、大会2日前にやっとチームが組めた。もう少しいいサッカーが見せたかった」とベズラン・グブリア監督は悔しそうだった。結果は8位。

 独自の行政府と軍隊を持つイラクのクルド自治州代表クルディスタンは、応援も含めて熱く激しいチームで、全員テクニックがあり、戦い方も統一されていてレベルが高かった。監督に聞いたら、イランのチームでプレーしているクルド人選手も混じっているというし、サポーターたちからも「イランとかイラクとか呼ばれるのは心外だ。俺たちクルドの代表チームだ」と何回も言われた。結果は5位。

 このタイプの独立「国」代表チームの不満は、すでにFIFAに加盟している国と独立をめぐってもめていると、加盟が妨害されることだ。結果的にであっても、FIFAが現体制側を支持し、独立を求める側を切り捨てている、と彼らは批判する。「我々は独立国で、国の代表としてサッカーをしたいんだ」というナゴルノ・カラバフサッカー協会コーレン・ヴォーニオン事務局長の言葉は重みがあった。

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