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ペップ・バイエルン、次のステップは「クライフの3バック」。更なる進化を求めるグラルディオラの野心

text by 本田千尋 photo by Ryota Harada

ドイツ代表勢不在が決断させた挑戦。優勝という成果に結びつく

 押し上げたアラバに対して、ベルナト、ローデまたはガウディーニョが三角形を作る。マルティネスに対しても同様である。アラバがボールを前に運んだときに、ペップがしきりに戻れというジェスチャーを見せることがあったが、アラバに対するパスコースを提示しろ、という意味合いだったと思われる。

 アラバとマルティネスがビルドアップに関与しながら、ペップ・バイエルンは流動的なうねりの中でパスを繋ぎ続けた。

 ペップの「勝てないだろう」という発言は、つまるところ、テレコム・カップは実験場である、という意味合いだったのだろう。テレコム・カップが30分ハーフという変則的なトーナメントであること、W杯参加組が加わっていない中での戦いであることを考えれば、冒険にはうってつけの舞台である。

 特にW杯参加組が不在の中でのスタートについて、キッカー誌によればペップは「一つの大きな挑戦であり、私はそれを引き受ける」と述べており、そうした特殊な状況が3バックという試みに繋がった側面もあるのだろう。

 ペップの実験は、結果的には優勝という成果に結びついた。ボルフスブルクを3-0のスコアで粉砕したサッカーは、このままブンデスリーガであれば優勝を狙えるのではないか。

 しかし、バドシュトゥバーとマルティネスの間を縦パスとスピードで突かれた場合には脆さを露呈し、ボルシアMGには敗退の一歩寸前まで追い詰められてもいる。

 その辺りは「勝てないだろう」というペップの発言どおりなのだが、またキッカー誌には「通常、我々は4バックでプレーする」というコメントも残しており、テレコム・カップで見られた3バックは今のところ挑戦的な実験の域を出ないようだ。

 しかしそこに、クライフの3バックを復権させながら、バイエルンをさらに進化させようとするペップの野心も見え隠れするのである。

【了】

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