フットボールチャンネル

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第13回 激動の2013シーズン

サッカー批評誌上で2007年から5年間「哲学的思考のフットボーラー 西村卓朗を巡る物語」という連載を行っていた西村卓朗氏。現役引退後、VONDS市原の監督として新たな一歩を踏み出しました。

シリーズ:元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 text by 西村卓朗 photo by VONDS市原

【これまでのお話】

2013年12月 On the pitch

元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第13回 激動の2013シーズン
【写真:©VONDS市原】

 2013年の全国社会人大会が終わり、シーズンも残すは市原KSLカップのみとなった。実際には昇格などに関わる試合ではないが、関東リーグ1部、2部20チームが集い行われるカップ戦。来季1部で戦うことも決まっていたので、どのくらいの実力差があるのか、現在の立ち位置を知る上で来季の参考になる大会であった。

 またKSLカップは地元市原市の冠のつくカップ戦である。サッカー環境に恵まれる市原だからこそできることであって、地元での開催だけになんとか良い結果を残せればと思い臨んだ。

 4チームのグループリーグで、1部のさいたまSC、Tonan前橋、2部の神奈川教員SCとの対戦となった。結果からいうとさいたまSC3-1○、Tonan前橋1-1△、神奈川教員4-0◯と2勝1分けの1位でグループリーグを通過できた。

 一番手ごたえを感じたのは2戦目のTonan前橋との試合で、春先に行ったトレーニングマッチではまったく歯が立たなかったが、数か月後には勝利目前の内容のゲームをすることができた。1シーズンかけて、基礎技術の徹底、戦術の浸透、意識改革を地道に行ってきたが、その成果を感じられることは何よりもうれしいことだった。

 決勝トーナメント一回戦の相手は坂戸大成シティ。3-2◯。来季に向けてチームの戦い方のオプションを増やしたいと考えていたので、KSLカップでは思い切って3バックでの戦いを試みた。シーズン中にやったことのないことを採用することは大きなリスクを伴う。そういう意味でこの大会は自分にとって大きな意味を持っていた。

 準決勝の相手は浦安SC。今季実に4度目の対戦となった。結果は2-2△。PK戦の末敗れることとなった。手ごたえ、課題、反省、色々なことを得る有意義な大会となった。

 2013年12月7日。8月から地道に行っていたベトナムリーグに所属するSHBダナンとの交渉の甲斐もあり、親善試合を行うこととなった。

 SHBダナンはVリーグに所属し、今季は2位だった強豪クラブ。何よりもサッカーが国技であるベトナムの1部リーグの強豪とアウェイで対戦できること自体地域リーグに所属するチームではなかなかチャンスのないことである。相手チームには外国人選手、ベトナム代表選手、U-23ベトナム代表選手なども多数所属するクラブで、対戦できることを非常に楽しみにしていた。

 結果は2-5●。実力的にはもちろん差があるものの、展開、点差、次第ではもう少し拮抗した内容にできたとも思ったが、やはりそのあたりは経験、メンタルがモロに出てしまった。一言で言えばビビってしまう選手が何人かいた。そのような現象は、球際、判断の遅れ、走るコースを相手に譲る、腰高のプレー、力み、色々な局面に様々な要素として現れる。

 アウェイで1000人近く入り、外国独特の荒れたピッチ、グランド外を拳銃を持った警備員が構える異様な雰囲気、経験の少ない選手達であれば緊張してしまっても無理もない状況ではあった。こればかりは経験だが、格上の相手とやる時だからこそ、恐れず正面からぶつかり自分の立ち位置を知ってほしかった。とは言え、何もできなかったという、失望感、屈辱感も、貴重な経験なのだろう。

 初めての監督業ではあったが、2月の初練習、初采配から始まり、天皇杯予選5試合、リーグ18試合、全国社会人大会関東予選3試合、全国社会人大会2試合、KSLカップ5試合、国際親善試合1試合 計34試合を終えた。終わってみるとあっという間だったが、とにかく何から何まで初めての事で、すべてが、発見、気付き、学びとなった2013シーズンであった。

【次ページ】Club Management
1 2 3 4

KANZENからのお知らせ

scroll top