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元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 第13回 激動の2013シーズン

シリーズ:元Jリーガー・西村卓朗の新たな挑戦 text by 西村卓朗 photo by VONDS市原

Club Management

 クラブマネジメントではこの時期力を入れたのは当然ながら強化活動。新入団選手の選考、勧誘であった。大学には今までのネットワークを最大限に活かし、連絡、挨拶を行い、実際に足を運ぶことを繰り返した。

 社会人サッカーの特徴であると思うが、大多数は働きながら選手を続ける形となるので、基本は大学卒業の選手を中心に探すことになった。

 Jリーグで選手をしていた時はオフになると、必ず三菱養和のユースチームに参加していたので、昔一緒に自主トレをしたその当時ユースだった選手が、各大学に散り、強化活動の場で久しぶりの再会を果たす選手が何人もいた。

 2013年のシーズンは自分の恩師である三菱養和の漆間さんと関東リーグを舞台に監督同士で対戦できたことにも感慨深いものがあったが、自分がスカウトを考える選手が、昔一緒にサッカーをして、その当時のサインや練習着をもらったといわれることには、照れくささと、ちょっとした違和感、またこんな風になるんだなと、不思議な気持ちではあったが、単に歳をとったと感じる出来事ではあった。ただ昔話ができるというのはスカウト活動には有効で、場はとても和んだ。

 その他にはもちろんJリーグのトライアウトにも顔を出した。その前年にも、すでにVONDSから監督の打診を頂いていたので、足を運んでいたが、トライアウトの場に行くと、選手だった時の生々しい感覚がよみがえって来たのを覚えている。あの場は本当に独特の雰囲気で、思い入れ、覚悟、決意、多くの選手の様々な感情が交錯している。

 参加リストをもらってじっくり観察した。そこにはかつて、一緒にプレーした選手や、対戦した選手、後輩など多くの知っている選手達が自分の未来を切り開くために文字通り、一生懸命プレーしていた。

 感情に浸りそうになりながらも、冷静にチームの補強ポイント、VONDSのチームの雰囲気、自分の戦術にそこでアピールする選手達を重ね合わせながら、スカウティングを続けた。

 長く選手をしてきたし、自分は選手を観察することが現役の時から好きであった。こんなプレーをする選手はこんな性格かなとか、蹴り方、止め方、走り方など短い時間の断片的な情報ではあるが、選手の傾向、判断の基準はまだ論理的には伝えられないが感覚的には随分整理されていた。

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