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【佐山一郎×後藤勝 “サッカー狂”特別対談】フットボール・ライティングの地平線 第3回「記事になった原稿は、すべて本になることを目指さないとダメ」

text by 後藤勝 photo by editorial staff

新しい試みから生まれる読者との新しい関係性

【佐山一郎×後藤勝 “サッカー狂”特別対談】フットボール・ライティングの地平線 第3回「記事になった原稿は、すべて本になることを目指さないとダメ」
サッカー狂の両氏は意気投合したのか、意気消沈したのか…【写真:編集部】

後藤 まだ還暦を迎えたり定年退職した『エルゴラッソ』や『J’s GOAL』の記者はいないですし、サッカーライターの老後の具体的な感覚はわからないですけれども。でも、ライターは選手との距離がひらく年齢に達しても、まだ仕事は現役で続いていきますからね。

佐山 選手の次は監督だ、経営者だ、会長だと取材対象がスライドしていくうちに自分はヨボヨボとか(笑)。先日、アギーレの八百長関与問題で宇都宮徹壱さんが『報道ステーション』に出ていたり、元川悦子さんが日本テレビに出ていたり、それに接することでまた高揚するんですよね。おっ、やってるね、もうひと踏ん張りやろうかなという感覚がまた湧いてくる。新境地も開かなければ、とかでね。

 新しいことでいうと、後藤さんは小説『エンダーズ・デッドリードライヴ』で新しい資金調達システムであるクラウド・ファンディングにチャレンジしていたけれども、あれはどういう経緯で?

後藤 もともと出版自体、頓挫しかけていたんですけれど、なんとかWeb連載を経て単行本化しようということになったんですよ。書籍に対しての告知にもなるし、Webコンテンツをひとつつくることにもなる。でも実際に予算の設計段階に入ると、サイトの構築コストが想定していたよりも高くつくことがわかりました。

 そこでまた頓挫しかけて……そうなると、サイトを広告付きにするか、外から資金調達するしかない。さいわい、クラウド・ファンディングの「ミライブックスファンド」を紹介してくれるひとがいて助かりましたが。

佐山 金額は想定以上に集まった?

後藤 そうですね。最初に募集した額のほぼ倍で、その意味では成功でした。剰余分をその他の予算に廻せましたし。

佐山 ちょっと回りくどい方法と感じる人もいるかもしれないけど、新しい方法論を試すことでいままでの読者と書き手の関係性とはちがうものが築けるのはまちがいない。クラウド・ファンディングも電書+PODも、目に見えるかたちで実績が残りつつあるから、今後はまた新しい展開になるんじゃないかと期待しています。

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